研究実績の概要 |
本研究の目的は、空間非一様な応力・摩擦下における断層破壊の開始・停止の条件を理論的に解明し、その条件を自然地震発生モデルに適用することにより、自然地震の予測可能性を明らかにするとともに、想定南海トラフ地震について巨大地震発生の可能性を明らかにすることである。
今年度は、昨年度に引き続き、初年度に提案した破壊開始の可否と地震規模を理論的に予測する指標を、想定南海トラフ地震に適用し、想定南海トラフ地震の震源位置と地震規模の可能性を調べた。準静的応力蓄積計算(Hashimoto et al., 2017, JpGU-AGU 2017)では、GNSS観測データとある程度整合的な結果の得られる摩擦構成パラメータ分布が一組には絞られず、複数組示された。そのため今年度は、昨年度と異なる摩擦構成パラメータ分布を仮定して得られた、南海・東南海領域全体を破壊する地震から150年後の空間非一様な応力場と摩擦構成則を仮定した。初年度に得られた破壊開始と地震規模の指標を適用し、プレート境界面上の各点から破壊が動的に伝播し始めるために必要な破壊核サイズ、および各点から破壊が始まった場合の地震規模を推定し、破壊核サイズと地震規模の空間分布を得た。また、昨年度得られた結果と比較し、摩擦構成パラメータ分布の違いによってそれらの空間分布がどのように異なるかを議論した。
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