研究課題/領域番号 |
20K14587
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
濱田 洋平 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 副主任研究員 (80736091)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 掘削パラメータ / 掘削等価強度 |
研究実績の概要 |
本研究では、地下/海底下の現場応力下の強度断面を直接的に測定する手法を開発し、プレート沈み込み帯浅部・スロー地震領域の強度分布を明らかにすることを目的としている。近年掘削等価強度(EST)が提案され、様々な地質帯へ応用されている一方で、定量性の問題からこのESTは地質解釈への利用にとどまっている。そこで本研究では、実験室的な模擬掘削実験を行ってESTと原位置強度の変換法を作成し、掘削パラメータを用いた現場応力下の強度測定法を確立すること、そして国際深海科学掘削計画(IODP) Exp. 358 にて得られた南海トラフプレート境界断層浅部の掘削パラメータを用いて、スロー地震発生域の原位置強度の深度プロファイルを作成することを目指している。 当該年度では、その研究の初年度として、海洋研究開発機構・高知コア研究所設置の高速せん断試験機に流体を制御する機構を導入し、試験的な摩擦実験を実施し、実験の実現可能性の確認と予察的な掘削実験行った。 具体的には、流体の流速または流体圧を制御下状態で標準物質を用いた摩擦実験を摩擦実験を実施し、その軸方向距離の変化、速度、垂直応力に対応するトルクエネルギーを計算した。得られたデータについては新たに導入した解析用ワークステーションを用いて解析し、掘削等価強度ESTを試験的に算出した。これによって、研究所設置の試験機を用いて、掘削における現場状況を再現しつつ、掘削実験と掘削等価強度を実施できる環境を整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験の環境の整備は予定どおり行われ、実際に模擬実験を行うことができ、研究はおおむね順調に進んでいると考えている。 当該年度において高圧用シリンジポンプを新たに導入することを計画していたが、機構所有の同等スペック品にて代替できたために導入を見送った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、より本格的な流体制御下での掘削実験環境を整え、半遠洋性堆積物、珪藻土、天然の付加体試料(白亜系四万十帯砂岩・泥岩)や標準岩石試料であるベレア砂岩などを用いた掘削実験を行う予定である。水圧と垂直応力をそれぞれ0-30 MPaの間で、回転速度を1-100 RPMの間で変化させ、各条件でのトルク、掘進速度を計測することを目指す。 また、上記試料について、各水圧条件下での三軸せん断強度(実験における原位置強度)を三軸強度試験機を用いて測定する。 これらのデータを統合し、各掘削条件ごとのEST-原位置強度の相関図を作成・重ね合わせて重回帰分析を行うことで、EST-原位置強度の変換式を作成することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
導入予定であったシリンジポンプに替え、既に別装置で使用されていた同等スペックのシリンジポンプを用い、また学会や研究打ち合わせ等に計上していた旅費を使用しなかったために次年度使用額が生じた。 当該助成金については、実験を円滑に行うためのリモート監視システムの構築、シリンジポンプ保守・配管費用、追加試料購入費に充当し、実験の回数を当初予定よりも増やすことを計画している。
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