研究課題
本研究では、地下/海底下の現場応力下の強度断面を直接的に測定する手法を開発し、プレート沈み込み帯浅部・スロー地震領域の強度分布を明らかにすることを目的としている。実験室的な模擬掘削実験を行ってESTと原位置強度の変換法を作成し、掘削パラメータを用いた現場応力下の強度測定法を確立すること、そして国際深海科学掘削計画(IODP) Exp. 358 にて得られた南海トラフプレート境界断層浅部の掘削パラメータを用いて、スロー地震発生域の原位置強度の深度プロファイルを作成することを目指している。当該年度では、海洋研究開発機構・高知コア研究所設置の高速せん断試験機に流体を制御する機構を導入し摩擦実験を実施した。流体の流速または流体圧とともにトルクを制御し、標準物質を用いて摩擦実験を実施した。また、堆積物を用いた常温常圧での掘削実験を実施した。その結果、一軸強度と乾燥条件でのESTの相関が線形で得られた。また、実験機による掘削では、実際の掘削に比べて掘進時のエネルギーロスが極めて少ないことが明らかとなった。また、Exp. 358で取得されたデータを解析し、強度換算可能なトルクデータの抽出を行った。この手法を将来掘削予定である日向灘沖堆積物にも適用すべく、適用予定の海域地質調査を行い、堆積層の分布推定を行った。その結果、掘削予定地を含めた表層堆積物の分布が明らかとなり、強度分布の解釈に使用可能な構造データを得た。
2: おおむね順調に進展している
実験の環境の整備は予定どおり行われ、実際に模擬実験を行うことができ、研究はおおむね順調に進んでいると考えている。また、EST手法を適用予定の掘削地の事前調査を行うことができ、実験を行うべき条件(低圧・被覆堆積相)を得た。
実験を円滑に行うためのシリンジポンプ保守・配管を実施する。また、適用予定地域の地質を模擬した堆積物の準備を行う。含水条件での掘削実験、強度試験を実施し、得られた相関式から南海トラフ掘削データへの適用を行う。
前年度に他実験機で使用していた機器(シリンジポンプ)を転用したことで購入が不要となったために当該年度に繰り越しを行っていた。当該年度では、実験の回数を増やすとともに本研究で作成する手法の適用先(南海トラフ)の調査を行うことで、実験条件の確認・調整を実施したため。また、未使用分は、上記調査結果を学会・論文で報告するために使用する。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Physical Review Research.
巻: 4 ページ: -
10.1103/PhysRevResearch.4.013211
Journal of Geophysical Research: Solid Earth
巻: 126 ページ: -
10.1029/2021JB021831