研究課題/領域番号 |
20K14589
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
木村 俊則 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(地震津波予測研究開発センター), 研究員 (30520845)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地震波速度変化 / 南海トラフ / 孔内観測点 / 常時微動 / 地震波干渉法 / 間隙水圧 |
研究実績の概要 |
2020年度は研究課題の目的である,地震波速度の時間変化と地殻変動量の定量的関係を明らかにするためのアプローチとして,南海トラフ海底下に設置した複数の地震計の常時微動連続データを解析し,得られた地震波速度の時間変化と間隙水圧との比較を行った。なお,当初の研究計画では,2020年度に神岡鉱山に地震計アレイを設置し観測を開始する予定であったが,新型コロナウイルス感染症まん延の影響により出張を伴う観測を2021年度に延期し,既存データ処理を優先的に実施することとした。 具体的なデータ処理手順として,南海トラフに設置した3点の孔内観測点 (観測点名: C0002, C0006, C0010) に設置された孔内地震計により観測された常時微動記録に対して「地震波干渉法」を適用した。地震波干渉法は,2点の地震計で同時に観測された常時微動記録に対して相互相関処理もしくはデコンボリューション処理を適用することで,片側を震源とし,もう一方を受振点とする疑似波形記録を得る手法である。地震波干渉法の処理を孔内地震計の1時間ごとの観測データに適用することで,孔内観測点間の地震波速度変化に対応する波形を得た。 得られた地震波速度変化を,孔内観測点周辺の地殻変動に対応している孔内間隙水圧計データと比較したところ,観測点近傍で発生したM6.0の中規模地震の発生に対応した地震波速度変化,間隙水圧変化が確認された。一方で,ゆっくり滑り等の,より小さいイベントでは間隙水圧変化が明瞭に観測されるが,特に離れた2点間で得られた地震波速度変化はノイズに埋もれて明瞭ではなかった。本解析により,広域観測のデータでは微小な地震波速度変化を検出することは困難なことが分かった。2021年度は神岡鉱山での小スケール試験による地震波速度変化の観測,および同一地点に設置された歪計との比較を行い両者の関係を定量的に議論する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では2020年度に神岡鉱山での地震計アレイ観測を開始し,常時微動記録を利用し地震波速度変化を算出し同一地点に設置した歪計との比較を開始する予定であったが,新型コロナウイルス感染症まん延の影響もあり,出張を伴う観測を延期した。そのため小スケールでの地震波速度変化と歪変化の関係性の議論が開始できなかった。既存大規模観測点のデータを利用した処理を実施し,いくつかの知見を得たが,小スケールの試験開始が遅延したため,全体の進捗もやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,2020年度に延期した神岡鉱山での地震計アレイ観測を開始する。必要な観測機材 (データ収録装置,地震計) を2021年度前半に購入し,神岡鉱山へ設置し観測を開始する。地震計アレイで観測した常時微動記録に対して地震波干渉法の処理を適用し地震波速度時間変化を算出,同じ場所に設置された歪計との比較を行う。また,おおよそ4か月間隔で神岡鉱山に訪問し能動的探査を実施し,常時微動の処理により得られる地震波速度変化の基準データとして利用する。並行して海底孔内観測点のデータ処理も実施し,間隙水圧計以外の地殻変動センサ (傾斜計,歪計) との比較も実施しながら,地震波速度変化と地殻変動データの関係を定量的に議論する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に実施予定であった神岡鉱山での地震計アレイ観測の延期に伴い,観測装置の購入を2021年度前半に延期したため次年度使用額が発生した。
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