研究実績の概要 |
本研究の目的は、生体内または環境中に存在する脂質が、どのように生産され、その後どのように分解されたかを評価する新規手法である「脂肪酸分子内(カルボニル基)安定炭素同位体比解析法」の実用化を達成することである。具体的には、(i)申請者がこれまでに開発した測定機器(ガスクロマトグラフ-同位体比質量分析計:Gas Chromatograph-Isotope Ratio Mass Spectrometerの改良型)の「測定条件の最適化」、および (ii)その測定法で得られた同位体比から、天然試料に含まれる脂質の生産プロセスと分解量を評価するための「方法論(プロキシ)の確立」をおこなうこと、であった。 2020年度は、所属研究室既存のGCに、カルボニル基由来の炭素を脂肪酸から分離するために必要不可欠な「熱分解炉」を新たに設置することと、同位体比の解析をおこなうためのソフトウェアを導入した。2021年度は、測定条件の最適化、および、今後得られると想定される成果を、有効的に公表するための第一歩である「脂質分解において炭素同位体比に同位体分別が観察される」という観測的事実について、論文執筆をおこない、出版することができた(Takizawa and Chikaraishi, 2021, Researches in Organic Geochemistry, 37, 67-72)。そして2022年度は、安定した精度で連続した分析を実施するためのシステムの構築を試みた。具体的には、研究室で現在利用している同位体比質量分析計(IRMS)に対して、2020年に実施した「熱分解炉を設置したGC」と「IRMS」との間に存在するインターフェースの接続を実施した。
|