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2020 年度 実施状況報告書

核酸のメタロ塩基対形成から探る生命誕生以前の原始地球における核酸分子の高分子量化

研究課題

研究課題/領域番号 20K14597
研究機関奥羽大学

研究代表者

大樂 武範  奥羽大学, 薬学部, 助教 (80642636)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワードメタロ塩基対 / NMR / サイクリックボルタンメトリー
研究実績の概要

本研究の目的は、核酸分子の隠れた特性である“メタロ塩基対形成能”という観点から、生命誕生以前の原始地球における核酸分子の高分子量化について検証実験を行うことである。ヌクレオチド類のメタロ塩基対形成を介したポリヌクレオチド鎖の生成を検証する前段階として、ヌクレオシドモノマーのAg+を介したメタロ塩基対形成について検証実験を行った (Dalton Trans., 2021, DOI: 10.1039/d1dt00975c.)。
1H/13C NMR分光法を用いて、シチジン/Ag+ (2:1)錯体形成の実験的証拠を得た。さらに、シチジン/Ag+ (2:1)錯体の109Ag NMRスペクトル測定も達成した。シチジン/Ag+ (2:1)錯体形成に伴い、109Ag NMRシグナルは大きく低磁場シフトすることが明らかになった。低感度な核種である109Ag核のシグナル検出を達成し、NMR分光学的に稀な実験値を得ることができた。溶液中におけるシチジン/Ag+ (2:1)錯体形成は、メタロ塩基対形成(シトシン-Ag+-シトシン塩基対)と見なすことができる。すなわち、NMR分光学的な構造解析の結果から、シチジン(ヌクレオシドモノマー)がAg+を介したメタロ塩基対を形成することが実験的に証明された。
さらに、メタロ塩基対の物性解析として、シチジン/Ag+ (2:1)錯体の酸化還元特性の評価を行った。サイクリックボルタンメトリー(CV)測定の結果、Ag+を介したメタロ塩基対形成が、Ag+/Agの酸化還元電位に影響を及ぼすことが明らかとなった。メタロ塩基対形成に伴い、Ag+が還元されにくくなるという特性を見出した。この発見は、Ag+を介したメタロ塩基対形成を利用することで、Ag+/Agの酸化還元電位が制御できることを示している。この様な特性は、Agナノ粒子合成においても応用可能であると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

NMR分光学的な構造解析の結果から、ヌクレオシド(モノマー)であってもAg+を介したメタロ塩基対形成能があることが実験的に確かめられた。この結果から、種々のヌクレオチド類のメタロ塩基対形成を利用したポリヌクレオチド生成に関する検証実験を行う準備が整った。
さらに、Ag+を介したメタロ塩基対(シトシン-Ag+-シトシン塩基対)の酸化還元特性に関する新たな発見を論文として報告することができた(Dalton Trans., 2021, DOI: 10.1039/d1dt00975c.)。

今後の研究の推進方策

生命誕生以前の原始地球における核酸分子の高分子量化に関する検証実験を推進させる。金属(Hg2+やAg+)を介したメタロ塩基対形成を利用して、ポリヌクレオチド生成に関する検証実験を行う。原始地球の環境を模した種々の反応条件にて、ヌクレオチド類の連結反応を試みる。また、原始地球に存在したとされるヌクレオチド類を用いて実験を行う。生成物(ポリヌクレオチド鎖)の鎖長決定は電気泳動にて行う。
ポリヌクレオチド鎖生成の検証実験と同時に、メタロ塩基対の物性解析に関する研究も継続する。シトシン-Ag+-シトシン塩基対の酸化還元特性解析の結果(Dalton Trans., 2021, DOI: 10.1039/d1dt00975c.)から、メタロ塩基対形成によって、Ag+が還元されにくくなることが実験的に示された。メタロ塩基対の物理化学的な特性に関する情報は、ヌクレオチド類の連結反応における反応条件を考える上で有用である。このため、Hg2+を介したメタロ塩基対形成に関しても、サイクリックボルタンメトリー(CV)を用いた酸化還元特性の解析に着手する。

次年度使用額が生じた理由

ヌクレオチド類のメタロ塩基対形成を介したポリヌクレオチド鎖の生成を検証する前段階として、ヌクレオシドモノマーのAg+を介したメタロ塩基対形成について検証実験を行った。この過程で、Ag+を介したメタロ塩基対の酸化還元特性について新たな発見があった。このため、ポリヌクレオチド鎖生成の検証実験よりも、メタロ塩基対の酸化還元特性に関する新発見を論文として報告することを優先した(Dalton Trans., 2021, DOI: 10.1039/d1dt00975c.)。反応条件の検討(ポリヌクレオチド鎖生成の検証実験)のための試薬類の消費量が当初の見積よりも低くなったため、次年度使用額が生じた。今後、反応条件の検討のための試薬類の購入に使用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Effect of cytosine-Ag+-cytosine base pairing on the redox potential of the Ag+/Ag couple and the chemical reduction of Ag+ to Ag by tetrathiafulvalene2021

    • 著者名/発表者名
      Takenori Dairaku, Rika Kawai, Teppei Kanaba, Tetsuya Ono, Kentaro Yoshida, Hajime Sato, Kanako Nozawa-Kumada, Yoshinori Kondo, Jiro Kondo, Akira Ono, Yoshiyuki Tanaka and Yoshitomo Kashiwagi
    • 雑誌名

      Dalton Transactions

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1039/d1dt00975c.

    • 査読あり

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公開日: 2021-12-27  

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