研究課題/領域番号 |
20K14608
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
朴 明験 京都大学, 工学研究科, 助教 (90803479)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 変形 / 不均一変形 / 画像相関法 / 構造材料 / 応力 |
研究実績の概要 |
軟質なフェライト相と硬質なマルテンサイト相から成る二相鋼(Dual Phase (DP))鋼は高強度・高延性とともに優れた加工硬化能を示す代表的な先進高強度鋼(Advanced high strength steel (AHSS))の一つとして注目を集めている。単相材料は結晶粒微細化によって更なる高強度が実現される一方、延性が大きく低下してしまう欠点を示すのに対して、DP鋼においては結晶粒微細化により強度のみならず延性も大幅に向上する興味深い結果が近年得られた。 一方、画像相関法という先端ひずみ解析手法より、微細粒DP材は軟質相 / 硬質相間のひずみの差が小さく両相がより均一に変形することが明らかになっている。一方、DP鋼中の延性特性に大きく影響を与えるマイクロボイドの形成・伝播過程を調べた結果、結晶粒が微細になるほど、多数のマイクロボイドの形成が見受けられたものの、それらの成長・伝播が抑制されることが明らかになった。この結果より、微細粒DP材の高強度・高延性の実現はミクロ組織レベルでの両相の均一変形とともにマイクロボイドの成長抑制に起因していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異なるフェライト粒径を有するDPにおけるミクロ局所変形挙動を画像相関法により明らかにしている。結晶粒微細化により硬質なマルテンサイトがより変形に寄与しておりその結果、フェライトへのひずみの局所化を抑制することが確認された。微細粒DP材においてマイクロボイドが多数形成されるが、成長・伝播が抑制された。それに対して粗大粒DP材はボイドの形成頻度は低いが、成長・伝播の障害になるフェライト/マルテンサイト界面が少ないため、形成されたマイクロボイドが大きくなることが明らかになった。マイクロボイドの形成場所は主にフェライト/マルテンサイト界面またはマルテンサイト内部であり、成長・伝播はフェライト/マルテンサイト界面に沿って成長する傾向が見受けられた。こうしたマイクロボイドの形成・伝播は変形(ひずみ)の分布・局所化と大きく関係していることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
DP材のミクロ変形挙動とマイクロボイド発生機構をより詳細に調べ、微細粒DP材の延性向上機構を解明する。マイクロボイドの形成頻度・伝播を統計的な調査と共にマイクロボイドの形成・伝播過程を局所ひずみ分布の地理的情報を活用して深く理解し、画像相関法を応用した応力可視化手法でマイクロボイドと局所応力との関係を明らかにする。また、変形中マルテンサイト変態を起こすTransformation induced plasticity (TRIP)鋼の優れた力学特性をミクロ不均一変形の観点から調査し、複合組織材が有する優れた力学特性の根本原因を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響により、予備実験を含めた実験準備・計画に多少の遅れた生じたため、研究活動に遅延が発生した。試料の追加作製、実験消耗品の購入および機械的性質の評価のためのミクロ引張試験機等の導入・使用スケジュールが確保されており、研究成果を出すことに影響はない。
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