研究課題/領域番号 |
20K14618
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
後藤 健太 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 若手国際研究センター, ICYS研究員 (90815961)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ニッケル基超合金 / アルミナ / 高温ナノインデンテーション / 片持ちはり試験 |
研究実績の概要 |
1年目は、ニッケル基超合金に先立ち、アルミナ焼結体を用いて片持ちはり試験片の作製条件および試験条件の検討を行った。さらに、雰囲気によるニッケル基超合金の表面酸化挙動の違いを調査した。 ニッケル基超合金の片持ちはり曲げ試験では、塑性変形により荷重が連続的に変化し、破壊の有無が観察しづらいと予想される。一方、アルミナ焼結体は脆性破壊を示すため、破壊荷重を明確に判断できる。そこで、ニッケル基超合金での片持ちはり試験に向けて、まずは、アルミナ焼結体によって片持ちはり試験の作製条件を検討した。 その結果、はりの幅が数μmの微小片持ちはり試験片を作製することに成功した。具体的には、以下の手順による。電気伝導性を持たせるためにオスミウムをコーティングした後、走査型電子顕微鏡観察により粒界が試験片根元にくるよう作製位置を決定した。集束イオンビームにより試験形状への加工を行うが、適切なビーム条件でないと表面にダメージが入る、エッジがだれるなどの問題が生じる。そこで、ビーム条件を変えて試行を行い、適切な条件を決定した。加工した片持ちはり試験片をナノインデンテーション装置に設置し、曲げ試験を行った。ナノインデンテーション圧子をプローブとして用いた走査型プローブ顕微鏡により試験片位置を特定した後、片持ちはり先端に負荷し、荷重-変位曲線を取得した。弾性変形の後に脆性破壊を示す挙動が得られ、試験片作製および片持ちはり曲げ試験が適切に実施できていることを確認した。さらに、純アルゴンガス雰囲気とアルゴン-水素混合ガス雰囲気で加熱した後のニッケル基超合金の表面状態を走査型プローブ顕微鏡により観察・比較した。この結果、純アルゴンガスを用いた場合よりもアルゴン-水素混合ガスを用いた方が表面の酸化が抑制されていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニッケル基超合金の高温微小片持ちはり試験に向けた要素課題の解決を進められているためである。ニッケル基超合金の高温片持ちはり試験を実施するにあたり、①試験片形状への加工と負荷条件の検討、②高温中でのニッケル基超合金の酸化抑制が技術課題となる。①については、塑性変形によって破断荷重の解析が困難なニッケル基超合金に代わり、脆性破壊挙動を示すアルミナ焼結体を用いて、負荷にともない破断する挙動を得ることに成功した。②は、これまで用いていた純アルゴンガスに代わり、アルゴン-水素混合ガスを用いることにより、高温片持ちはり試験を行う特注ナノインデンテーション装置でニッケル基超合金の表面酸化を従来よりも抑制することを実験的に確認した。このように、1年目には、ニッケル基超合金の高温片持ちはり試験に向けた技術課題を着実に解決した。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展している
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今後の研究の推進方策 |
アルミナによる負荷条件の検討が完了したことから、ニッケル基超合の片持ちはり試験片の作製および曲げ試験を実施する。粒界が片持ちはり試験片の根元にくるよう加工位置を決定し、粒界部にノッチを導入することによる。これにより、塑性変形が生じるニッケル基超合金の破断特性を取得できるよう工夫する。高温の片持ちはり試験に際しては、雰囲気をアルゴン-水素混合ガスで置換することにより、酸化を抑制する。電子顕微鏡によって測定した片持ちはり試験片寸法を元に有限要素モデルを作成し、実験結果と有限要素法解析結果が一致するように破壊応力およびエネルギー解放率を決定する。
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