研究課題/領域番号 |
20K14624
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
古木 辰也 岐阜大学, 工学部, 助教 (00783482)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 磁気研磨加工 / ロボット研磨 / 金属積層造形 / 表面粗さ / 自動判定 |
研究実績の概要 |
低剛性多関節ロボットアームを用いた金属積層造形されたマルエージング鋼の自動磁気研磨法を開発するため,2020年度は以下のことを行った. はじめに磁気研磨加工を行うための,研磨装置を構成するべく,多関節ロボットアームの選定および研磨工具を把持し回転させる主軸を持つエンドエフェクタの開発を行った.エンドエフェクタの機能には研磨工具を強固に把持し,任意の回転数で自転させなければならない.本研究では,電動式ブラシレスモータスピンドルを採用した.また研磨時の荷重を測定し,ロボットを力フィードバック制御させるために6軸力覚センサを付加した.後述のマシンビジョンカメラを含めてエンドエフェクタ重量は3kg程度となり,多関節ロボットアームの必要可搬重量を4kgとして選定を行い,導入した.製作したエンドエフェクタを,導入した多関節ロボットアームに取り付けて,レーザトラッカによる位置決め精度の検証を行った結果,ロボットアームの仕様値(0.2mm)を維持しており,エンドエフェクタを付加したことによる位置決め精度の悪化は認められなかった. 次に,研磨加工面状態をインプロセスに自動判定するために,エンドエフェクタにマシンビジョンカメラおよびテレセントリックレンズを付加した.研磨加工の前工程のボールエンドミル切削した加工面と研磨加工を施した研磨面の画像を機械学習させ,研磨面の表面粗さの推定を行う手法を構築した.検証の結果,正答率は100%であり,有効性を確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁気研磨加工を行うロボットを構築するため,エンドエフェクタの設計・製作を行った.磁気研磨法は永久磁石を先端に持つエンドミル型工具を回転主軸に把持して自転させる.本研究では,電動式ブラシレスモータスピンドルを採用した.この主軸を固定できるエンドエフェクタを設計した.開発する磁気研磨法は研磨荷重が大きくなる工具中心付近を常に加工に用いるように工具を走査させるため,エンドエフェクタは多種多様な向きに傾く.このとき,ロボットアーム先端からエンドエフェクタ重心が遠くなるほど,たわみ変化量が大きくなり,姿勢による位置決め精度が変化すると考えられる.したがって,有限要素法を用いて,主軸を付加したエンドエフェクタの構造最適化を行い,エンドエフェクタ重心がロボットアームフランジ中心軸に一致するよう設計した.本研究では,研磨荷重を一定にするため,力フィードバック制御による位置決めを行うため,力覚センサをロボットアームフランジとエンドエフェクタ間に設置した.製作したエンドエフェクタと力覚センサの重量は約3kgであったため,ロボットアームの可搬重量は4kgとした.これらを組み合わせたロボット研磨装置の最大たわみは49 μm,最小たわみは42 μmであり,エンドエフェクタの構造最適化は有効であったといえる.またレーザトラッカによりロボット研磨装置の位置決め精度を検証した結果,ロボットアームの仕様値(0.2mm)を維持しており,エンドエフェクタを付加したことによる位置決め精度の悪化は認められなかった.したがって,様々な工具姿勢で磁気研磨加工を行えるロボット研磨装置を構築できた. 本研究では,研磨加工面の状態をインプロセスに自動評価するため,エンドエフェクタにカメラを付加した.ボールエンドミル切削面と研磨面の画像を機械学習させ,研磨面の表面粗さを推定した結果,正答率は100%であり,有効性を確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の磁気研磨加工は,永久磁石製工具と工作物間に隙間(研磨ギャップ)を設けて,このギャップ間に磁性流体を媒体とする研磨剤を吸着させることで研磨加工を行う.構築したロボット研磨装置は多関節ロボットアームの位置決め精度の仕様値である0.2 mm以下であったが,磁気研磨加工に関する先行研究では,研磨ギャップが0.2 mm変化すると,研磨荷重は約5 Nも変化する.研磨荷重の変化は不均一な除去量を生じるため,前加工で得た形状精度を悪化させる.そこで本研究では,エンドエフェクタに6軸力覚センサを取り付けており,加工中の研磨荷重を逐次測定して,研磨荷重が常に一定になるように研磨経路を補正しながら加工することを目指す.すでに力覚センサからの荷重データをリアルタイムに取得することは達成しており,研磨経路のリアルタイム補正を行う手法の構築を進める. 研磨面状態の自動評価を行う方法として,サポートベクターマシンを用いた自動判定を進めている.現在は,測定した既知の表面粗さRaを持つ複数の加工面(ボールエンドミルによる正面切削面,任意の時間だけ研磨した研磨面)を教師データとして,機械学習モデルを作成している.特徴量にはHOG(輝度勾配ヒストグラム)を採用している.ボールエンドミル正面切削面と研磨面に対しては,正答率は100%であったが,実際はボールエンドミルによる切削痕は様々な形状を有している.この場合の正答率は低下することがわかっており,この改善のために種々切削痕画像を取得・学習し,機械学習モデルの精度向上を図る.また,サポートベクターマシン以外の機械学習モデルの検討や,ハイパーパラメータの最適化法を検討することでも,安定して高い正答率を得られる研磨面状態の自動評価手法の構築を進める.
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