研究課題/領域番号 |
20K14624
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
古木 辰也 岐阜大学, 工学部, 助教 (00783482)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 磁気研磨 / 多関節ロボット / 表面粗さ推定 / 機械学習 / 画像解析 / サポートベクターマシン |
研究実績の概要 |
多関節ロボットによる自動磁気研磨では,金型のような前工程の切削加工等で得た形状精度を悪化させずに,工作物表面の切削痕などの加工痕を除去することが目的である.その一方で,本研究の球状永久磁石を用いた磁気研磨では,工作物表面における研磨点の傾きによって,研磨工具の作用する点が変化するため,工作物表面の各点での研磨量が変化する.そうすると研磨量の不均一による形状精度の悪化や表面粗さのばらつきが生じる.そこで2年目は,過剰な研磨を抑制するべく,研磨中に同時に研磨面の表面粗さを推定することを試みた.これにより,すでに十分研磨されている箇所への過度な研磨を避け,効率よく研磨の完了に至ることが期待できる.初年度にロボット研磨機にカメラ等の撮影機能を付加しており,インプロセス撮影できる.ボールエンドミル切削した金属積層造形製マルエージング鋼を研磨加工し,一定の時間間隔で研磨面を撮影した.初年度は切削痕が除去された状態のみ評価をしたが,本年度は切削痕を含む加工面も解析対象とした.撮影した研磨面画像に対して,各種特徴量(FFT,ORB,Lab)を画像解析した.画像解析時のパラメータ調整は,各種パラメータで抽出した特徴量と実際に測定した表面粗さを組み合わせたデータセットを作成し,サポートベクターマシン(SVM)で機械学習した.そして加工面の表面粗さを推定し,その正答率を評価することで行った.その結果,特徴ベクトルを昇順にソートすることで正答率が向上した.学習器の推定精度を向上させるべく,ハイパパラメータの最適化を行った.最適化にはグリッドサーチとベイズ最適化を用い,ベイズ最適化で正答率が向上した.この学習器で表面粗さが未知な加工面に対して粗さ推定を行った結果,正答率は最大90%であり,初年度の切削痕がない状態の正答率(100%)よりも悪化したが,切削痕があっても高い正答率を得られるようになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多関節ロボットによる研磨加工の目的は磨き作業の自動化である.従来もロボット研磨は提案された例があるが,工作物表面全体の研磨作業が完了したか否かの判断,研磨が不十分な箇所への追加工や,そのための研磨パスの作成は手作業に依存している場合が多く完全な自動化には至っていなかった.本研究では,研磨作業の進捗度合いを,カメラを使って研磨面の粗さを推定することで評価できるように,機械学習を用いた表面粗さ推定手法を構築した.さらに,その推定精度が高く有効であることを明らかにした.以上のように,多関節ロボットによる磁気研磨を自動化するために必要な機能を実現できているため,本研究は順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに研磨工程の自動化のために加工面表面粗さの推定を重点的に行い,高い正答率を得ることに成功した.2年目は,金属積層造形製マルエージング鋼を効率よく磁気研磨加工するために,磁気研磨剤の構成要素含有量の最適化を実施する.磁気研磨剤は,磁性流体と鉄粉,砥粒,増粘剤,界面活性剤で構成されるが,被削材物性に合わせて,その構成比を変化させることで研磨能力を改善することができる.そこで2年目は研磨剤構成要素の含有比を変化させ,実験計画法により,各要素の影響を評価し,最適研磨剤を導出する.また,多関節ロボットで研磨を実施する利点は,工作物形状に依存するが,研磨工具の作用点をある程度一定化できることである.そこで,研磨能力が最大となる工具角度を探索する.研磨圧力は工具中心で最大になるが,工具中心は周速がゼロであるため,研磨能力は最大にならない.したがって,工具中心から離れた点で研磨能力が最大になると考えられ,この点を実際の研磨実験によって探索する.
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