金属積層造形(AM)製マルエージング鋼の磁気研磨において適切な研磨剤構成要素の混合比を調査した.研磨剤を最適化することで,表面粗さを効率的に良好な状態に仕上げることができる.研磨剤の基本的な構成は,ベース液が油ベースの磁性流体,磁性粒子としてカルボニル球状鉄粉,砥粒としてホワイトアルミナ砥粒,増粘剤としてαセルロース,界面活性剤としてオレイン酸ナトリウムである.このうち,球状鉄粉とαセルロースの含有量,ホワイトアルミナ砥粒の粒径を変化させて,材料除去量を比較することで最適研磨剤を導出した.試験片はハイブリッド金属AM機でマルエージング鋼を造形し,磁気研磨加工前の表面粗さを一様のするために,被削材をフェイスミルで平面切削した.前加工面に対して,構成を変化させた種々研磨剤を用いて,多関節ロボット研磨機において研磨加工実験を行った.各構成要素が材料除去量に与える影響を定量化するために,実験計画法を用いて実験した.実験条件数は,鉄粉質量とαセルロース質量,砥粒径の3要素を各4条件設定し,これらを組合せた合計16条件である.研磨条件は先行研究の結果を準じて,工具回転数は500rpm,送り速度は5mm/min,研磨ギャップは0.5mmである.実験の結果,球状鉄粉質量が大きく砥粒径が小さいときに材料除去量は大きくなった.αセルロースの増加により研磨圧力が大きくなることで材料除去量が増加すると思われたが,大きな影響は示さなかった.本実験の結果より,各構成要素の含有量は,磁性流体を36.6wt%,カルボニル球状鉄粉を33.1wt%,砥粒を18.7wt%,αセルロースを7.9wt%,オレイン酸ナトリウムを3.7wt%とし,砥粒径をφ1μmとした研磨剤が適切であると示した.以上より,金属AM製マルエージング鋼の磁気研磨を多関節ロボット研磨機を用いて自動かつ高能率に実施できる可能性を示した.
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