半導体デバイスの基板材料であるシリコンウェーハの仕上げ工程で行われる両面研磨加工では,シリコンウェーハの高平坦化が重要な課題となっている.しかし,実験的検証の難しさがネックとなり平坦化理論の構築は進んでいない.本研究は,“実験的に裏付けられた” 平坦化理論を構築することにより,両面研磨加工においてシリコンウェーハの平坦度を向上することを目的として実施した.具体的には,工作物の回転速度がシリコンウェーハの平坦度に及ぼす影響に着目し,「回転速度」,「工具‐工作物間の摩擦状態」および「加工液流れ」の関係を実験的に明らかにすることで,高平坦化を実現可能な新たな保持具の開発を目指した. 先行して行った研究から,両面研磨加工における工作物の平坦度悪化には「工作物回転速度の変動」が強く影響することを見出しており,その変動を抑制するという方針で研究を進めた.はじめに,これまでに見出している「工作物上下面における摩擦状態の差が大きいほど回転速度が周期変動する」という関係を実験的に検証するために,工作物回転速度の評価方法を構築した.そして,摩擦係数の評価と回転速度の評価を通して「工作物上下面における摩擦状態の差が大きいほど回転速度が周期変動する」という関係を検証するとともに,摩擦係数の差と回転速度の変動の定量的な関係を明らかにした.次に,摩擦状態の上下差は,工作物下面への加工液の流入性の悪さに起因することから,下側工具上の加工液流れを評価する方法を構築し,評価実験を通して,保持具が加工液流れに及ぼす影響を明らかにした.そして,工作物下面への加工液の流入促進に有効な保持具の設計・試作を行い,その効果を検証した.
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