研究課題/領域番号 |
20K14628
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
藤井 達也 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (10780489)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | PAA被覆CNT / スピンコート / 薄膜引張試験 / 湿度センサ |
研究実績の概要 |
本研究では、ポリイミド(PI)の前駆体であるポリアミック酸(PAA)をカーボンナノチューブ(CNT)に被覆したPAA被覆CNT粒子を溶媒中に分散したPAA/CNT分散液を作製し、それをスピンコート法で成膜した後に溶媒を揮発させることで、超高濃度・良分散状態のCNT複合PI薄膜を創製する。さらに、薄膜引張試験中に電気機械的特性を同時計測できる実験システムを構築し、恒温恒湿槽内で引張試験を実施することで、電気機械的特性と湿度との関係を実験的に評価する。引張試験で得られた知見をもとに、超高濃度CNT複合PI薄膜を用いたフレキシブル基板対応型湿度センサを新開発する。 初年度となる2020年度、超高濃度CNT複合PI薄膜の創製とその機械的特性評価を実施した。再沈殿法により作製したPAA被覆CNT粒子を溶媒中に分散させたPAA/CNT分散液を作製し、スピンコート法で成膜した後に溶媒を揮発させ、加熱してイミド化させることで所望の濃度を有するCNT複合PI薄膜を作製した。PAA/CNT分散液の顕微鏡観察と粒度分布測定、およびCNT複合PI薄膜のTEM観察を行った結果、CNT濃度によらずCNT分散状態が良好であることがわかった。粒子内部までCNTが均一に分散したPAA被覆CNT粒子を用いることで、CNTの再凝集を抑制し、良分散状態を維持しながら20wt%のCNTを複合化させることに成功した。さらに、CNT複合PI薄膜の加工条件(エッチング等)の最適化を行い、薄膜引張試験片を作製するとともに、独自開発した薄膜引張試験装置を用いてCNT複合PI薄膜の機械的特性を評価した。なお、電気的特性は評価途中であり、引き続き実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的・目標を達成するため、まずは超高濃度CNT複合PI薄膜の創製とその機械的特性評価を行った。PAA/CNT分散液を作製し、それを薄膜化することで所望の濃度を有するCNT複合PI薄膜を作製した。CNTをPAAで被覆することでCNTの再凝集を抑制し、良分散状態を維持しながら20wt%のCNTを複合化させることに成功した。さらに、CNT複合PI薄膜の加工条件の最適化を行い、薄膜引張試験片を作製するとともに、独自開発した薄膜引張試験装置を用いてCNT複合PI薄膜の機械的特性を評価した。これは当初の計画と概ね一致しており、本研究が順調に進んでいることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の2020年度は概ね順調に進んだ。最終年度となる2021年度、引張試験中の薄膜材料の電気的特性を4端子抵抗測定にて同時計測できる実験システムを構築し、恒温恒湿槽内で引張試験を行うことで、CNT複合PI薄膜の電気機械的特性と湿度との関係を実験的に評価する。CNT複合PI薄膜の機械的特性、電気的特性、湿度応答性を総合的に評価し、フレキシブル基板対応型湿度センサに最適な薄膜製造条件を特定する。超高濃度のCNT複合化により、湿度変化にともなう電気抵抗変化の応答性、線型性を改善し、湿度の検出範囲を飛躍的に向上した湿度センサを実現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、半導体加工装置の拝借予定が先送りとなった。 CNT複合PI薄膜の電気的特性が評価途中となっているが、評価内容に変更はなく、2021年度分と合わせて速やかに執行する。
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