研究実績の概要 |
熱処理不要な優位性を持つ表面活性化法による常温接合技術は、多くの材料に適用可能だが酸化物系材料は難しい。しかしながら、サファイア同士では強固な接合が確認できており、その接合機構を解明することでさらなる適用材料の拡大が期待でき、今後ニーズ増大が予想される異種材料間接合への展開に向けた基盤技術整備につながる。 初年度ではX線光電子分光法(XPS)によりサファイアウェハ表面における活性化処理後表面の化学結合状態及び組成分析を行い、活性化のための照射ビーム条件との関連性把握を中心に検討した。状態分析からビーム照射により表面の結晶性にダメージ発生が確認され、定量分析から照射後の表面はAl-richであり、シミュレーション結果と定性的な一致が得られた。これらの成果は、Scripta Materialia, Vol. 191 (2021)として発表した。 2年度目では、電子エネルギー損失分光法(EELS)を用いて常温接合によるサファイア間接合界面におけるAlの電子構造解析を中心に検討した。透過電子顕微鏡(TEM)により接合界面には厚さ1nm程度の中間層の存在が確認され、その中間層内のAlのEELSスペクトルはサファイア内のそれとほぼ同様であり、中間層における結晶性は維持されていると考えられる。しかしながら、XPSによる分析結果と同様に中間層におけるAlのEELSスペクトルにおいてもブロード化が確認され、結晶性へのダメージも同時に発生していることを明らかにした。 本年度に関しては、2か月の実施期間の中で、前年度のEELS測定データの詳細な解析を試み、前記中間層におけるAlの配位構造がサファイアにおけるAlのそれとは異なる構造を形成している可能性を示し、前年度得られた結果と合わせ、論文投稿に向けたデータ整理を行った。 以上、本研究により、酸化物系材料の接合技術を確立する上で有用な知見整備ができたと考えられる。今後、本研究で得られた結果を論文等で成果発表する予定である。
|