本研究では加工時におけるびびり振動の発生を工作機械の剛性制御により回避・抑制する手法の提案とシステムの開発を目的として、研究を実施した.本研究用に開発されたデスクトップ型工作機械は軽量化のためにパイプフレーム構造となっており,このパイプ(ブレスバーと称する)の取り外しや締め付けトルクの調整により,機械の剛性が変更可能となっている.これを利用して,びびり振動を回避し,切削条件を変更することなく,安定かつ高精度な加工を実現した. 初年度ではびびり振動の発生する切削条件および機械の振動特性を把握するため,切削条件を変えて加工試験を行い,このときの加工面性状および加工音の測定を行い,切削理論から求まる面粗さとの比較,びびりマークと呼ばれる加工痕の有無の確認した.また,工具および工作機械の各部位で生じる振動を加速度計・変位計で測定した.このときの切削力変動を動力計により測定することで,加工振動特性を明らかにした. 2~3年目には,ブレスバーの取り付け箇所および締め付けトルクを様々に変更し,そのときの機械剛性の変化ならびに振動特性の変化を確認した.これをもとにびびり振動の発生する切削条件を示す安定限界線図を作成し,剛性変化によりこの切削条件が推移することを示した.加工実験により,びびり振動が抑制され,表面粗さが改善されることを確認した.すなわち,提案する剛性制御の手法によりびびり振動が回避・抑制可能なことを示した. 最終年度では,剛性変更のためのブレスバー張力の付与を手動で行っていたものを,サーボモータの回転角度制御による剛性制御システムを構築した.モータ回転角とブレスバーの張力の関係をひずみゲージにより測定し,剛性制御を行うことで,加工中にも提案する工作機械のびびり振動回避手法が適用できるようなシステムを実装し,手動時の実験と同じ加工条件での切削を行い,びびり振動の抑制を確認した.
|