研究課題/領域番号 |
20K14642
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
渡部 誠也 大阪大学, 理学研究科, 助教 (20850035)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 表面分析 / その場観察 / メゾスコピック領域 |
研究実績の概要 |
2021年度は、「研究実施計画」の①分子吸着膜上の溶媒和構造の解明と②メゾスコピック領域における摩擦試験の内、②を中心に取り組んだ。2021年度に実施した研究では、メゾスケール摩擦試験機と顕微ラマン分光分析を組み合わせた、その場観察試験機の開発を行った.計画書記載の機構をより発展させ、メゾスコピック領域の摩擦状態におけるラマンスペクトルの取得だけでなく、表面形状も同時計測可能な機構とした。装置の作製と並行して、摩擦試験機構の制御プログラムの開発も行った。開発した装置では、半球プリズムプローブを低荷重(~10mN)で走査する表面形状取得モードと、高荷重(80mN程度)で走査する摩擦試験モードの二種類のモードで運転する。いずれの場合も、半球プリズムプローブと試料間の力が設定荷重で一定となるようにフィードバック制御を行う。目標荷重10mNに設定した場合のフィードバック制御の精度を検証したところ、100 μm × 100 μmの走査範囲において、±2%の誤差で走査可能であることを確認した。この時、サブμm程度の高さ精度で表面形状情報を取得することが出来ている。また、半球プリズムプローブと試料表面の接触部におけるラマンスペクトルを取得することにも成功しており、開発した装置は、潤滑上における表面形状と化学情報(ラマンスペクトル)を同時取得可能な装置であることが確認できた。2021年度における成果は、表面形状情報とラマンスペクトルを同時計測することで、多角的な現象観察を可能とし、より正確なメゾスコピック領域現象の理解に繋がると期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は当初、2021年度の早期の段階で装置の設計構想が完了するなど、計画以上の進捗であった。しかしながら、物品の納期が大幅に遅れたため、装置の組み上がりやプログラムのテスト等に遅れが生じた。一方で、2021年度の達成目標としていた、装置部品の設計・製作と装置の組立、3軸ピエゾステージによる摺動動作確認、ならびに、荷重制御のためのフィードバック制御は達成できたため、本研究課題は順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度では、開発したメゾスコピック領域における摩擦試験に改良を加える。現在の試験機では、プリズムプローブに直径7mmの半球プリズムを使用しているが、直径が大きいため、表面の微小な凹凸を検出することが困難である。そのため、プリズムプローブ直径の~200μmまでのサイズダウンを図る。2022年度では、上記方策により、数~数十nm程度の”微細な凹凸形状”とラマンスペクトルを同時取得することを目標とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
世情による理由から、開発予定であった装置部品の調達に支障が生じたため、および、所属研究機関の移動があったため。実験に必要な機材や試薬の購入に使用する。
|