研究課題/領域番号 |
20K14643
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研究機関 | 大同大学 |
研究代表者 |
宮本 潤示 大同大学, 工学部, 講師 (50713046)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プラズマ窒化処理 / トライボロジー / 化合物層 |
研究実績の概要 |
本研究では,窒化層の制御可能な窒化処理法を応用し,機械部品や工具,金型などに存在する隙間内面にも形成可能で,テクスチャリング表面の自己修復性を備えたこれまでにない新しい処理法の開発を目的としている.2020年度の研究成果としては下記の通りである. 【2020年度研究実績の概要】 (1)プラズマ(電子)密度の高いプラズマ窒化処理装置を構築した.本装置を用いて発生させたプラズマの電子密度は10^12cm^-3であった.(2)電子ビームの加速電圧および電流値が増加することでプラズマ密度が増加することが明らかとなった.(3)構築したプラズマ中の粒子ではN2+が最も多く検出され,N2やAr,NH,Hβなども検出された.これらの検出された粒子およびプラズマ密度から窒化層の形成に寄与する粒子としてイオンやラジカルに加えて,窒素原子も考えられる.(4)処理条件を制御することで最表面に形成する化合物層の形成を制御できることが明らかとなった.(5)窒化層は処理時間6時間で,最大150μm前後形成することが明らかとなった.この時,最表面にはε-Fe2-3N層が形成していることを確認した. これらの結果より,本研究の目的である窒化層を応用した潤滑性に優れた新しい処理法の構築は可能であることが考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,窒化層の制御可能な窒化処理法を応用し,機械部品や工具,金型などに存在する隙間内面にも形成可能で,テクスチャリング表面の自己修復性を備えたこれまでにない新しい処理法の開発を目的としている.2020年度(フェーズ1)では、新しい処理装置の構築とそのプラズマの分析を目的としており,これらについては実験の結果から明らかとなった.プラズマ装置のパラメータを制御することで,最表面にはε-Fe2-3N層が形成していることが明らかとなり,また,断面曲線から表面の凹凸が顕著に認められた.これらの結果から,2021年度の研究計画の1つである化合物層の形成条件解明はすでにほぼ解明した.しかし,窒素濃度に従って形成するはずであるポーラスの形成が安定していない.このことから2021年度は化合物層の中でもポーラス層に絞って調べることとなる.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度(フェーズ2)では,2020年度構築した処理装置を用いて化合物層の中でもポーラス層の形成条件を明らかにする.このとき,窒素濃度および表面の形状をさらに分析し,必要に応じて処理する材質の検討も行う計画である.2020年度では,十分に厚い化合物層が形成したにも関わらず,ポーラス層の形成が安定していなかった.そのため,材質だけでなく,処理温度や流入させるガス種などの条件を見直す計画である.2022年度(フェーズ3)では,2021年度で明らかにした化合物層の制御条件を基に,この窒化層の摺動特性の評価を行う計画である.この時,潤滑特性だけでなく,摩耗特性も調べることでその優位性について明らかとする.
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次年度使用額が生じた理由 |
計画した実験数に対して構築した実験装置の消耗品の減少が生じたため,次年度使用額が生じた.これらの使用額については次年度の実験装置の消耗品費として充てる計画である.
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