本研究では,機械部品隙間内面にも形成可能で,テクスチャリング表面の自己修復性を備えたこれまでにない新しい処理法の開発を目標とし,プラズマ窒化処理の化合物層の潤滑特性について明らかにすることを目的とした.その中でも2020年度~2021年度では,新しい装置の構築および化合物層の形成条件の解明を目的とした.試料として熱間金型用合金工具鋼のSKD61を使用し,支配的なパラメータの仮説および実証を行った.従来以上に高密度なプラズマ装置の構築に成功し,この装置を用いることで以下の結果を得た.1.水素及び窒素ガス量に依存し,最表面の化合物層の形成が変化した.化合物層の厚さについては当初10~15μmを目標としていたが,これを達成することが出来た.この化合物層の厚さは窒素ガス量に依存していることが明らかとなった.2.最表面の化合物層は開口がほとんど見られず,このことから化合物層はポーラス状となっておらず,緻密な状態であることが明らかとなった.3.形成した化合物層は,未処理の2倍以上の硬さとなっていた.このことから耐摩耗性については,従来通り未処理に比べて著しく優れていると考えられる.4.一定の条件で形成させた化合物層の試料は未処理の試料と比べて摩擦係数が減少することが明らかとなった.特に摩擦試験の低速度域(境界潤滑域)では摩擦係数が大きく減少する傾向が見られるとともに,未処理の試料と比べて流体潤滑領域が拡大する傾向が見られた.最終年度の2022年度では,化合物層がポーラス状となっていなかった原因について仮説を立て,実験を行った.さらに前年度までの2年間で行った実験条件を用いて窒化処理を行い,その潤滑特性を明らかとした.
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