研究課題/領域番号 |
20K14645
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
赤嶺 政仁 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00835465)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 流体計測 / 可視化 |
研究実績の概要 |
BOS-CT法は,光学的な密度計測法であるBackground-Oriented Schlieren(BOS)計測と,医療等でも用いられるComputed Tomography (CT)解析を組み合わせた,三次元的な流れ場の計測手法である.BOS-CT法の従来の課題として,光が遮られやすい壁面近くの流れ場における高感度計測の困難さがあげられる.本研究はこの課題を解決するため,BOS-CT法を,壁面で光が反射するような複雑な場合へ適用可能となるように発展させ(以下,鏡面反射型BOS-CT法),その有用性を実際の流れ場(例えば,斜め平板へ衝突する超音速ジェット内の衝撃波や大規模乱流構造)の計測により実証することを目指す.その実現に向けて本年度は,鏡面反射型BOS-CT法を構成する以下の要素について基礎検討を行った. [1. BOS計測] 鏡面反射を含む光路でのBOS計測の確認を行った.ロウソクで温められた空気の計測により,パラメータ設定を検討し,カメラキャリブレーション方法を確認した.また東京大学柏風洞において実証対象の流れ場(超音速衝突ジェットの衝撃波構造)を計測し,気流中のダストから鏡面を保護する必要性など,実用上の課題を明らかにした. [2. CT解析] 鏡面反射を含む光路に対応したCT解析のためのGPU並列処理コードを開発し,簡易的なテストデータでの検証を行った.テストデータの範囲では,本手法で壁面近傍の構造が再構成できることを確認した. [3. 試験設備] 共用設備である東京大学柏風洞では,カメラ配置等の検討が困難なため,研究室内に小型のジェット試験リグを構築した. [4. 実証対象] 将来的に本手法の適用を検討している,超音速ジェットの大規模乱流構造が,どのような三次元構造を持つかを予め見積もるため,大規模乱流構造から生じた音波の三次元構造を,マイクロホンを用いて調べた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は,上述の基礎検討に加え,実際に鏡面反射型BOS-CT法の計測系を構築し,簡単な系(たとえばロウソク周りの気流や,超音速衝突ジェットの時間平均的な衝撃波構造など)に適用する計画であった.鏡面反射型BOS-CT法の計測系構築のためには,複数台のカメラの同期撮影システムを作る必要があるが,上述の基礎検討に想定よりも時間を要したため,この計測システムの検討に遅延が生じている.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,上述の基礎検討の結果を踏まえ,鏡面反射型BOS-CT法の計測系を構築し,比較的計測が容易な時間平均場(超音速ジェットの衝撃波構造)および,より計測が難しい瞬時場(超音速ジェットの大規模乱流構造や,三次元的な衝撃波境界層干渉など)の計測実証に取り組む.鏡面反射型BOS-CT法の計測系を構築するためには,複数台のカメラの同期撮影システムを作る必要があるが,そのためにはまず,カメラの個数や配置,解像度などの性能が計測結果に及ぼす影響を明らかにし,最適なシステム構成を慎重に検討する必要がある.そこで実際にカメラ等を購入する前に,数値シミュレーションデータを用いたカメラ配置と計測誤差の関係等の検討に取り組んでいる.
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り,基礎検討に想定よりも時間を要したため,鏡面反射型BOS-CT法の計測系を構成するカメラの選定に遅延が生じた.このため,カメラ購入分の予算の次年度使用が生じた.カメラの個数や性能について慎重に選定を進めた後,購入をする予定である.
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