研究実績の概要 |
昨年度に発表した「磁性液滴の希薄懸濁液のレオロジー制御」(Physical Review Fluids, 2020)では単体の液滴を対象にした解析を実施していたが,本年度はそれを多体へと拡張し液滴の集団制御について解析しその性質を明らかにした.平行平板間に存在する多数の液滴が流体相互作用により自己組織化し,直列に整列,または結晶構造を呈することがこれまで先行研究により知られていた.本研究では制御対象を磁性液滴にしより豊かな自己組織化のパターンを実現できることを明らかにした(Ishida et al., 2021, arXivに投稿版を掲載).直列で整列している状態の磁性液滴に対し平行平板に垂直の磁場を負荷すると,液滴の磁化による磁気双極子の相互作用により斥力が生じ結晶構造へと遷移することを報告した.この液滴の自己組織化構造が遷移する無次元数は理論的に求めることができ,磁気による斥力が流体相互作用の引力を上回ったときに結晶構造へと遷移することが明らかになった.また斜め方向に磁場を負荷すると直列の液滴の整列方向を変更することができる.この技術は液滴の自己組織化の構造を外部磁場により自由に変更することを可能にするため重要な基礎研究である.以上の成果は現在,国際学術誌の査読を受けており近く修正版の提出を予定している. また本研究課題ではスピンオフの研究として,基盤上の細胞が発揮する収縮力を機械学習を用いて推定する技術(Li, Matsunaga et al., Communications Biology, 2022)を開発し,これを報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在,本研究課題に関連する論文を3編投稿中であり,当初の計画以上に進展している.また本課題のスピンオフとして,細胞収縮力を機械学習を用いて推定する技術(Li, Matsunaga et al., Communications Biology, 2022)を発表するなど,追加の課題を推進することができた.
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