流体計測では、計測機器の大きさがボトルネックとなる場合が存在する。例えば、小型熱線流速計では熱線の長さが数mm、小型ピトー管では管断面積が数mm×数mmであるため、計測可能な流速はmmオーダーの平均的な流れ場となる。本研究の目的は、数百μmオーダーの小型温度計によって得られる回復温度から、流速分布を高空間解像度で計測する新たな手法について確立し、その手法を応用することで微小臨界ノズル内の流れ場を明らかにすることである。本年度は、トラバース計測によるノズル内部の詳細な流速計測と三次元数値シミュレーションを実施した。結果として、実験におけるスロート中心およびスロート下流の流速分布は、数値シミュレーションと良好に一致することが明らかとなり、本研究で提案した流速計測手法の妥当性を検証することができた。 本研究期間全体を通して、物体表面で計測される回復温度とよどみ点温度の差から流速を求める手法について注目し、2つの実験と1つの数値シミュレーションを実施した。まず、提案手法の妥当性を担保するため、国家標準にトレーサブルな流速計測に基づく評価実験を行った結果、流速が60 m/sから95 m/sの範囲において熱電対と白金抵抗測温体を用いたそれぞれの流速計測で、流速標準からの差は5%以内に収まることが確認された。妥当性について検証した後、提案手法に基づく臨界ノズル内部の流速計測を実施し、加えて数値シミュレーションとの比較についても実施した。提案手法により計測されたノズル内の音速流は、数値シミュレーションや理論値とも良好に一致した。既存の安価な様々な温度計により、低擾乱かつ高空間解像度な流速計測を幅広い流速レンジで実現できたことは特筆すべきものである。
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