研究課題/領域番号 |
20K14658
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
岡部 孝裕 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (70772713)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 相変化材料 / 赤外線サーモグラフィ / 2色レーザー誘起蛍光法 / 粒子画像流速測定法 / 可視化計測 / レイリーベナール対流 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,相変化材料の融解過程で生じるレイリーベナール対流の熱流動現象の解明を最終目的とし,具体的な目標として「液相内温度場・速度場と加熱面熱伝達率分布の同時可視化計測システムの構築」,「諸種条件下における相変化材料内熱流動現象の可視化実験」,「モデル化,データベース構築」を設定した.本年度は①可視化計測システムの構築,②画像処理手法の開発,③計測システムの妥当性検証に関する予備実験を実施した. ①研究代表者が開発してきた赤外線サーモグラフィを用いた熱流動可視化計測手法を拡張するために,2色レーザ誘起蛍光法(2色LIF法)と粒子画像流速測定法(PIV法)を1台のカラーカメラで同時に行う手法を導入し,新たな同時可視化計測システムを構築した.カラーカメラのRGBフィルタと蛍光・散乱光の波長帯を利用して,R,G画像に2色LIF法,B画像にPIV法を適用し,1台のカメラで温度場と速度場の同時計測を実現した. ②開発した同時可視化計測システムの液相内温度場・速度場および加熱面熱伝達率分布のための画像処理手法をMathWorks社製Matlabを用いて開発した.また,2色LIFでは,実験で得られた蛍光強度比と温度の関係を予め校正する必要があるため,温度校正のための画像処理手法の構築も並行して実施した. ③開発した計測システムと画像処理手法の妥当性を検証するために,下面より加熱された矩形容器内グリセリン水溶液の自然対流可視化計測実験を実施した.予備実験では,プラントル数やレイリー数,容器縦横比等をパラメータとすることで,幅広い条件にて妥当性を検証した.結果より,既存研究の矩形容器内自然対流熱伝達の傾向と良い一致を示したため,構築した液相内温度場・速度場および加熱面熱伝達率分布の可視化計測システムの妥当性を示すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,相変化材料の融解過程で生じるレイリーベナール対流の熱流動現象の解明を最終目的とし,本年度の目標を①可視化計測システムの開発,②画像処理手法の開発,③計測システムの妥当性検証に関する予備実験と設定していた. 上記の通り,同時可視化計測システムの構築,画像処理手法の開発,計測システムの妥当性検証に関する予備実験を実施し,良好な結果を得ることができた.つまり,当初予定していた研究計画は,順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
今後,蓄熱材としてよく使用されるn-オクタデカン等を用いた相変化材料内熱流動現象の温度・速度・加熱面熱伝達率の時空間同時計測実験を実施予定である.特に,レイリー数,プラントル数,ステファン数,容器縦横比が相変化材料内で生じる複雑な熱流動現象に与える影響を詳細に明らかにすることを目標とする.温度場,速度場,加熱面熱伝達率のほかに対流セル構造や融解面形状,流体温度等にも着目していく.なお,より広範囲のデータが必要な場合は,融解潜熱の異なる相変化材料も視野に入れて実験を実施する. 得られた諸種条件下における可視化計測データを参考に,相変化材料内で生じる熱流動現象のモデル化を行う.さらに,データを上記パラメータ等で整理することで,最適な熱設計の指針となるデータベースの構築を実施する.
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