研究課題/領域番号 |
20K14663
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
志村 敬彬 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (70814143)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 固体酸化物形燃料電池 / 固体酸化物形電解セル / 三次元電極微細構造 / 格子ボルツマン法 / 酸素同位体交換 / 二次イオン質量分析法 |
研究実績の概要 |
固体酸化物形セルの燃料電池(SOFC)および電気分解(SOEC)モードのリバーシブル運転における劣化の抑制とセル性能向上を実現するためには,電極における反応メカニズムの解明が重要である.実電極における反応を明らかにすることを目的とし,酸素同位体ラベリング試験,電極三次元微細構造解析,数値計算を組み合わせることで反応メカニズムの解明に取り組んだ.前年度までの取り組みにおいて,LSM-YSZコンポジット空気極における反応状態を,三次元電極構造を用いて格子ボルツマン法による電気化学シミュレーションより再現した.本年度は,酸素同位体交換実験と二次イオン質量分析解析により得られた運転状態の電極内部における酸素同位体分布から,実電極における反応状態を理解するため,運転状態における酸素同位体拡散の数値計算に取り組み,実験から得られた同位体分布と比較を行った.電気化学シミュレーションで得られたポテンシャル場,イオン電流分布,反応電流分布の結果を利用し,酸素同位体の駆動力として,濃度勾配による拡散,イオン電流による移流,三相界面における反応電流由来の生成を考慮して酸素同位体の輸送を計算した.比較のために,平衡状態における酸素同位体分布を再現するため,濃度勾配による駆動のみを与えた計算も併せて行った.運転状態においては,平衡状態と比較し,YSZ内部における同位体濃度の上昇が見られ,定性的に実験結果を再現する結果となった.計算で得られたLSM相内部の濃度は,実験結果に比べ低く,計算で用いた反応モデルと実際の電気化学反応の違いを示唆するものであると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は,引き続き研究室の活動制限のため,新たな実験を行うことは困難であったが,数値計算による取り組みを進め,貴重な知見を得ることができた.この結果を踏まえ,本年度は実験も併せて取り組むことで,当初の研究計画を達成できると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
LSM-YSZ空気極に関して,必要に応じて新たな解析,計算を行い,反応メカニズムに関してまとめる予定である.また,活動制限により中断していた,Ni-YSZおよびNi-GDCを用いた燃料極に関する実験を再開し,電気化学計測や電極三次元構造再構築,数値計算と合わせ,リバーシブル運転時における劣化メカニズムの解明に取り組む.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた装置がモデルチェンジにより,より低価格で必要な機能を有するものが購入できたため,残額が発生した.こちらに関しては,次年度の使用予定額と合わせ,数値計算や実験計画を促進するための機器購入に使用することを検討している.
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