自動車の排ガス浄化システムや燃料改質の触媒として広く使用される担持金属触媒においては,高温にて耐凝集性を有する構造の実現が望まれる.本研究では気相燃焼合成法を用い,白金/セリアをモデル系として様々な条件においてナノ粒子合成を実施し,粒子構造制御因子の解明と貴金属の凝集を抑制しつつ高い比表面積を有する最適な触媒構造の実現を目指す. 前駆体溶液を超音波振動で霧化して拡散バーナ火炎中へと供給するタイプの燃焼合成装置を用い(火炎噴霧熱分解法),火炎温度および前駆体濃度が白金/セリアナノ粒子の構造に与える影響を調査した.火炎温度一定で前駆体濃度を変化させたところ,濃度の減少に伴ってセリアの粒径は減少する一方,白金の粒径は大きく影響を受けないことが明らかとなった.また高濃度の前駆体溶液を用いた場合,中空のセリア粒子が多く観察された.次に前駆体濃度一定で火炎温度を変化させたところ,高温条件においては10nm以下の細かい粒子が主に生成され,低温になるにつれて100nm程度の大きい粒子の生成が支配的になる傾向が見られた.これらに加え,低温においては多結晶構造を有するセリア粒子が多く確認され,また白金粒径は低温ほど小さくなることが明らかとなった.以上の結果をもとに,気相反応による粒子生成ルートと液滴からの生成ルートそれぞれにおける白金/セリアナノ粒子生成メカニズムの考察を行った. 高比表面積,貴金属高分散性が要求される触媒粒子としては,一般に粒径は小さい方が有利となる.そこで上記の結果より微細な粒子が得られる高温火炎を用い,粒子捕集効率の向上および捕集時間の短縮のために流路を改良し,前駆体濃度を増加させた上で,白金/セリア粒子の合成を行った.得られた粒子のBET比表面積は112.4 m2/g,COパルス吸着法による白金比表面積は2.4 m2/g(白金分散度19.7%)であった.
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