研究課題/領域番号 |
20K14668
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
塘 陽子 九州大学, 工学研究院, 助教 (70844273)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 液中その場観察 / 透過型電子顕微鏡 / 生体膜 / リポソーム |
研究実績の概要 |
細胞膜の構造安定性は凍結保存において細胞の生存率を左右する要因の一つであり,安定性を決める脂質分子膜の流動性は温度に依存する.本研究では,透過型電子顕微鏡(Transmission electron microscopy : TEM)を用いて液中の脂質二重層をナノメートルの分解能でその場観察する手法を確立するとともに,温度と生体膜の構造安定性メカニズムを解明することを目的としている.本年度は,(1)脂質二重層を内封した液体セル作製法の開発と(2)液中TEM観察における電子線照射の影響評価と観察条件の選定に取り組んだ. (1)液体セルは,2枚のグラフェン付きTEMグリッドで液体試料をサンドイッチした構造である.まず,単層グラフェンをグリッドに高確率で広範囲に転写する方法を開発した.脂質二重層については,Langmuir-Blodgett (LB)法を用いて,直径0.1mmの小孔が施された支持膜付きTEMグリッドに架橋した二次元膜の作製を試みた.しかし,市販のLB膜作製装置を用いると,膜は形成されるものの,グリッドが大きく破損するためセルに封入できないことがわかった.そこで,計画を変更し,二次元膜ではなく球形のリポソームを観察することとした. (2)直径100nm程度のリポソームを含む水溶液を封入した液体セルを作製し,TEMで観察した.その結果,水中では染色をせずにリポソームが観察できること,低い電流密度の電子線では,電子線照射による気泡の発生はなく,リポソームへの影響も小さいことがわかった.また,TEM画像から測定した直径と光散乱法による測定値を比較することで,観察したものがリポソームであることを確認した.次年度も引き続き,TEM観察を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた試料を二次元膜からリポソームへ変更することはあったものの,リポソームをTEMで液中観察することができた.ただし,脂質二重層の構造を観察するには空間分解能が十分ではないため,液体セルの改善が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
観察する脂質二重層は,リポソームを使用する.昨年度に引き続き,液体セルの開発と観察条件の選定を行い,温度制御機能付きのTEMホルダーを使用した脂質膜の構造変化の観察へと研究を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大に伴い,実験が長期間制限され,学会もオンライン開催となったため,使用額が計画よりも少なくなった.
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