電気的な力で液滴を操作するElectrowetting-on-dielectric (EWOD) と呼ばれる技術を発展させ、従来は数十~数百ボルトが必要とされていた印加電圧を5ボルトにまで低減させた。従来のEWODでは液滴と電極の間に誘電体の固体層が挿入されるが、本研究ではこれを液体誘電体で置換することにより低電圧化を達成した。本技術をElectrowetting-on-liquid-dielectric (EWOLD) と命名し、現在は執筆した論文が英文ジャーナルで査読を受けている最中である。 本発明は、液滴が移動する際に固体との付着を解消しなければならない点に着目し、この付着力が非常に低い液体誘電体を採用するに到った。また、液体誘電体層の存在は付着力の低減だけでなく潤滑効果も得ることができるため、より一層の駆動電圧低減が実現された。 本研究では、EWOLDのコンセプトを示すだけでなく物理モデルも構築している。その結果、液滴移動速度がデバイス形状・印加電圧などから予測可能であることを示したほか、従来のEWODでは駆動力の低下に直結していた誘電体層の厚さがEWOLDでは駆動力に影響しないことを示した。 さらに、液滴を4本の単三電池で駆動するデモンストレーションを行った。この駆動電圧はスマートフォンから出力可能な程度の電圧であることから、本発明がスマートフォンによる液滴駆動など、電気的な液滴駆動の新たな応用可能性を拓くものであることを示した。
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