研究課題/領域番号 |
20K14677
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
長 真啓 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 助教 (30735105)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 磁気浮上モータ / 人工心臓 / モータ効率 / 省エネルギー化 / 血液ポンプ |
研究実績の概要 |
モータ損失低減のために,積層ケイ素鋼板を用いた磁気浮上モータを製作した.軟鉄無垢材から積層コアへとモータ材料を変更することで,総エネルギ効率は26%から33%へ増加した.小児用人工心臓のポンプ駆動に必要な入力エネルギを推定すると,軟鉄無垢材では2-4 Wであったものが1.5-3 Wへ削減され,モータ材料変更が消費電力削減に有効であることが実証できた.積層コアを用いたモータで十分な磁気支持回転性能を発揮可能であると考えるが,本モータでの安定した磁気浮上制御が実現できないときに速やかに軌道修正できるよう,先行研究で磁気浮上の実現可能性の知見を有する圧粉磁心モータの設計も行った.今後,積層コアを用いたモータの発生磁気支持力評価,磁気浮上制御系の耐外乱性能について評価を進める.本研究では,既開発モータ(同一構造)では予備実験において10G以上の加速度外乱に対抗可能であることを確認している. 血液ポンプ駆動時にインペラに働く流体力の調査,および圧流量特性を改善するために,数値流体解析を用いてポンプケーシングおよび浮上インペラの形状検討を実施した.シングルボリュートケーシングとダブルボリュートケーシングを設計し,設計点においては,ダブルボリュートケーシングの方がインペラ半径方向の流体力が低減されることを確認した.また,インペラ目玉径を現行設計の4 mmからインレットポート径と同じ6 mm拡大することで,ポンプ性能が向上することが分かった.本知見を踏まえて,次年度以降に開発する血液ポンプでは,ダブルボリュートケーシング,改良型インペラを製作する. 次年度に先駆けて,チタンケーシングによるインペラ浮上位置検出用センサの出力劣化について調査した.樹脂製のケーシングを使用した際の約50%まで出力感度が低下するが,ケーシング厚さの調整により浮上インペラの位置検出を実現できると考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低損失モータの製作,血液ポンプの流体力およびポンプ特性推定,チタンケーシング化に伴う課題改善の実現可能性検証を実施しており,概ね計画書通りの結果を得られている.低損失モータの発生トルク特性から,今年度開発したモータは既開発モータと同等の支持力発生が見込め,十分にインペラの非接触支持が可能であると見込んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度開発した低損失モータの磁気浮上回転制御性能を評価する.その後,改良型ポンプを製作してその有効性を検証する.合わせて,ポンプ駆動時の流体力や粘性減衰の影響を詳細に評価し,磁気浮上に必要なエネルギをいかに削減できるかを調査する.チタンケーシングについても試作を開始し,最終年度での動物実験に適用可能なトータルシステムの構築を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
出張旅費が生じなかったのが最大の理由である.モータ製造に関しては概ね想定通りであり,巻き線や配線を手作業で実施したため,若干の費用削減がされている.この差額については,より動物実験に使用するモータをより高精度で製作するための資金に充当する.
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