研究課題/領域番号 |
20K14680
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
藪井 将太 東京都市大学, 理工学部, 准教授 (90800756)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 磁気ディスク装置 / 位置決め制御 / ロバスト制御 / 外部振動 |
研究実績の概要 |
本研究では磁気ディスク装置の記録密度の向上にむけて,マルチアクチュエータ方式の磁気ヘッド位置決め制御系に関する研究を行った.今年度の成果は大きく2点挙げられる. 1点目は,現在主流だと考えられる2段アクチュエータ方式の制御系において,位置決め精度を30%向上可能な設計方法を開発した.本制御系設計の特徴は片方のアクチュエータに対する制御系を敢えて積極的に不安定にすることで,従来までの設計では実現できなかった領域に踏み込んだ点である.さらに,大量生産品であることを考慮して,設計時の公差などのばらつきを考慮したロバスト性も担保した設計となっている.この研究成果については英文論文1件,国際学会1件,国内講演1件が掲載された. 2点目は,最新の磁気ディスク装置に搭載されている3段アクチュエータ方式の制御系において,データサーバで発生する高周波外乱を補償可能な設計方法を開発した.磁気ディスク装置の多くはデータサーバで利用されているが,その環境下では最高で10kHzの外部振動が発生することが報告されている.先の2段アクチュエータ方式の制御系で開発した設計方法を応用し,2つのアクチュエータを不安定化,1つのアクチュエータで全体を安定化する設計方式を考案した.提案する制御系では,制御可能な周波数帯域を10kHz以上にすることができる.本制御系を実装することで,位置決め精度を約50%向上できる見込みである.この研究成果については英文論文1件が掲載された. 以上の成果により,現行の磁気ディスク装置における磁気ヘッド位置決め制御の精度向上の見通しが得られたと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではマルチアクチュエータ方式の磁気ディスク装置の制御系設計法を開発しているが,具体的な応用先としては下記の3点だと考えられる. ・主流:2段アクチュエータ方式 ・最新:3段アクチュエータ方式 ・将来:4段アクチュエータ方式 これら3点の内,本年度までに「2段アクチュエータ方式」,「3段アクチュエータ方式」の制御系設計については研究成果が得られた.残る「4段アクチュエータ方式」についても来年度中に完成できる見込みである.よって,本研究は概ね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究対象としては,将来の磁気ディスク装置で搭載されると考えられる4段アクチュエータ方式に対し,搭載前に先んじてその制御系設計法を開発することである.これまでに2,3段アクチュエータ方式の制御系設計を開発できており,これを応用することで実現できる見込みである. また,2,3段アクチュエータ方式は現行の制御系を改善することを主な目的としていたが,4段アクチュエータ方式は設計方針も固まっていない状態である.そこで,磁気ディスク装置の制御系設計に採用されてきた方針と併せて,性能,コスト,ハンドリングなどの観点で特徴をまとめ,設計のガイドラインを作成する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度までに研究に必要な物品は購入できている.また,次年度使用額は15,862円と大きな額でないため,次年度の装置購入に充てる方が適切と考えた. 次年度は,磁気ディスク装置に加わる外乱を計測するための加速度センサ,変位センサを購入する予定である.
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