近年の情報化社会の発展に伴い,世界中からインターネットを介したデータの保存先であるデータサーバの拡張が進められている.実際のデータの格納先はデータサーバ内の磁気ディスク装置であるため,その記録容量の増大がデータサーバの拡張に直結する.磁気ディスク装置の記録容量はディスク上のデータの読み書きを行う磁気ヘッドの位置決め精度に依存する.そこで,本研究では磁気ヘッド位置決め精度向上に貢献できる多段アクチュエータの制御系設計に関する研究を行った.主な成果は下記の通りである. ・磁気ディスク装置の多段アクチュエータ方式の制御系における代表的な設計法の比較検証を行い,それぞれの特徴と性能を明らかにした.また,磁気ディスク装置の多段アクチュエータ方式のベンチマークモデルにおいて,設計戦略をまとめ,系統的な設計が行える指針を明らかにした. ・データサーバ内の磁気ディスク装置に加わる高周波数外乱を補償可能な多段アクチュエータ方式の制御系の設計法を提案し,従来設計法と比較して位置決め精度を約30%向上することに成功した. 本研究は,磁気ディスク装置の多段アクチュエータ方式における制御技術の研究を題目とし,設計論から実用上の課題解決まで研究を行い,当初の目的を達成できたと考えられる.これらの成果は学術的には,多入力単出力系の制御系における具体的な設計論の提案という点で有意義なものである,また,実用的にはHDDの磁気ヘッド制御系の精度を向上し記録容量の増大に資すると期待される.
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