研究課題/領域番号 |
20K14686
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
鷲野 壮平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 産総研特別研究員 (30850937)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ランニング / フィードバック技術 / トレーニングシステム / 運動スキル / 運動学習 |
研究実績の概要 |
本研究は、エネルギー消費効率の高い運動スキルを誰もが獲得できるテーラーメイド型運動学習システムの開発が目的である。それを実現するために「運動個体化技術」と「ステップフィードバック技術」の構築に取り組む計画を立てた。初年度にあたる2020年度は、ある運動スキルの運動を個人の運動特徴に合わせて表現する「運動個体化技術」の開発を予定していたが、新型コロナウイルスの影響を鑑み、研究計画を変更し、2021年度に行う予定であった現在の運動から目標となる運動に向けて段階的に変容させた運動を生成する技術「ステップフィードバック技術」の開発に取り組んだ。 光学式モーションキャプチャシステムによるトレッドミル上でのランニング運動を2名について計測した。その後、各被験者の解剖学的特徴点を基に個体化させたデジタルヒューマンモデルを作成し、逆運動学計算より、ランニング運動解析を行った。解析した1名の運動をトレーニング前の運動(現在の運動)、もう1名の運動を変容させるゴールとなる運動(目標となる運動)と仮定し、現在の運動から目標となる運動に任意の段階で変容させたランニング運動を生成する技術を開発した。生成した各運動は、産総研が開発したデジタルヒューマン技術を扱うプラットフォームソフトウェア(DhaibaWorks)にて、可視化できるようにした。これにより、運動学習者の現在の運動と目標となる運動との差異が大きかったとしても、少し運動変容させれば到達できる段階的なゴールを設定することができ、運動学習者のモチベーションを維持しつつ、着実に運動学習が進むことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、異なるトレッドミル速度におけるランニング運動を行い、その際の運動計測と呼気ガス分析を同時に行う予定であった。その計測を行うにあたり,産総研の人間工学実験の申請を行い、実験実施の了承を得ていた。しかし、新型コロナウイルスの影響で、所属機関における人間工学実験の中止・制限を余儀なくされ、複数人の運動計測が必要となる「運動個体化技術」の構築を行うため計測は、当初の計画通り進めることができなかった。新型コロナウイルスが早期収束し、運動計測が行えることを見込んでいたが、思いのほか長期間に渡っているため,途中から計画を変更し、「ステップフィードバック技術」の開発を先に取り組んだ。「ステップフィードバック技術」とは、現在の運動から目標となる運動に向けて、段階的に変容させた運動を生成技術であり、その基盤となる部分の実装まで行えたが、計画変更の判断が遅れため、そのトレーニングシステムの実装まで至っていない。次年度は、トレーニングシステムの開発とともに2020年度に取り組む予定であった「運動個体化技術」を開発し、目標となる運動の生成ができれば、計画変更して先に構築した「ステップフィードバック技術」と組み合わせることで本研究の目的が達成できる。現在までの成果は、2021年度に学会発表を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、トレーニングシステムの開発に向けて、ステップフィードバック技術のリアルタイム化を行うとともに、2020年度には計画を変更して取りやめた「運動個体化技術」の構築を進める。エネルギー消費効率を算出する上で、呼気ガス分析を予定していたが、次年度においても新型コロナウイルスの収束が見込めないことも念頭に、重心位置の変動など別指標からエネルギー消費効率の算出、もしくは別の観点での運動スキルを評価軸に運動個体化を行うことを考える等、臨機応変に研究活動を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、本年度計画していた複数人に対する光学式モーションキャプチャおよび呼気ガス計測を含むランニング計測ができなかったため、使用額に大幅な差異が生じた。次年度は、新型コロナウイルス感染症対策を十分行ったうえで、ランニング計測を可能な範囲で行えるように進める。本年度使用する予定であった計測に関わる費用については、次年度使用する予定である。
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