本研究は、エネルギー消費効率の高い運動スキルを誰もが獲得できるテーラーメイド型運動学習システムの開発を目的としている。2022年度は、主に2021年度に基盤を構築したトレーニングシステムの拡張として、現在の運動から目標となる運動に向けて段階的に変容させた運動を生成する技術「ステップフィードバック技術」で作成した運動のリアルタイムフィードバックの実装に取り組んだ。システムの構築には、モーションキャプチャデータをUnity上にストリーミングする仕組みを利用し、運動学習者が現在行っている運動と目的とした運動を行うアバターの表示、および運動中の任意の関節角度データを表示できるようにした。これにより、運動学習者は自身のランニングフォームを定性的かつ定量的に確認しながら変容させることができ、効果的なトライ&エラーに基づく運動学習の実現が期待される。 それと併行して、本研究で運動スキルの対象としたエネルギー消費効率を評価する代替指標の導入に取り組んだ。当初はエネルギー消費効率の指標として酸素摂取量を想定していたが、新型コロナウイルスの影響で実施が遅れたことから、新たな指標として身体重心位置の変動に着目した。しかし、身体重心位置を精度高く算出するには、対象者の身体各部に多くのマーカーを貼付する必要があるため、評価コストが高く現場応用には不向きであった。そこで、身体重心位置の算出の低コスト化を目指し、少ないマーカー数から身体重心位置を推定するモデルの構築に取り組むとともに、その内容をまとめた論文を投稿した。 また、本研究を進めるうえで、データの個人差を適切に取り扱える統計処理手法である線形混合効果モデルを偶然知ることができた。これまでに取得していたデータをこの統計処理手法を用いてまとめ、その内容について国内学会で2件発表し、さらに査読付きの国際学術誌にも掲載された。
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