研究課題/領域番号 |
20K14696
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大橋 ひろ乃 大阪大学, 基礎工学研究科, 特任研究員(常勤) (60853562)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | イオンゲル / 触覚センサ / ひげセンサ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,「フレキシブルなイオンゲルセンサの開発」である.イオンゲルは電気伝導性を持つ高分子ゲルである.接触刺激を受けると歪みを起こし,それに伴抵抗値に変化が生じえるため,イオンゲルは接触センサの材料として利用できる.本研究では,シリコンにイオンゲル流路を組み込むことでやわらかく,外側が加工しやすいセンサの開発を目指す.今年度は①配置と軟度の組合せによる接触センサの特性変化の解析,②接触位置推定センサの性能解析,③ヒゲロボットの作製について研究を行った.①:3Dプリンタを用いて平面的な流路をもつイオンゲルセンサを作製,特性解析を行った.その結果,刺激方向とイオンゲルセンサの流路方向に関係があることが分かった.さらに平面的な2つの流路を組み合わせることで,三次元的な流路をもつイオンゲルセンサを開発した.抵抗値の他に静電容量値を読み取ることで,各流路のセンサ情報を取得することが可能となった.この内容は,来年度の国内学会で発表予定である.②:今年度は,昨年度開発した接触位置センサを基にインターフェース(センサと信号線の接続)の改良を行った.新センサで分解能を調査したところ,約20mmであることが分かった.ヒトの2点弁別閾(2点刺激を与えられたときに,2点の刺激だと感じられる最小距離)は,手のひらが10数mm,手の甲で30数mm,前腕が約40mmであることから,ロボットハンドやアームのセンサとして十分に応用可能である.③:ひげを模したイオンゲルセンサ(ひげセンサ)を作製し,感度の良いデザイン(流路の形状,ひげの位置など)を探索した.さらにひげセンサを搭載したネズミ型ロボットを開発した.走行実験を行ったところ,走行速度に依らずひげセンサがひげのたわみ具合を検知し,たわみ具合によって障害物を回避する行動が発現した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,「フレキシブルなイオンゲルセンサの開発」である.この研究目的を達成するため,①配置と軟度の組合せによる接触センサの特性変化の解析,配置による接触センサの特性変化の解析を行い,ある刺激に対して流路により解像度が異なることを見出した.②接触位置の推定方法の確立,③ヒゲロボットの作製とセンサの評価の3つを軸に研究を進める予定であった.①:昨年度は線状の流路に対し,今年度は平面的な流路をもつイオンゲルセンサの開発が可能となった.②:位置推定は昨年度に確立を行い,今年度に学会で発表済みである.③:ひげセンサを搭載したネズミ型ロボットを開発し,簡単な制御にもかかわらず低速・高速走行どちらの場合でもセンサ値の変化から障害物回避ができることが分かった.当初計画していた研究項目3つのうちすべての項目での研究が進展していることから,現在までの進捗状況をおおむね順調に進展していると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度であることから,センサのロボットへの実装実験を中心に行うことを考えている.たとえば,ネズミ型ロボットを開発は出来たが,性能評価はまだ不十分である.ネズミはヒゲによって障害物との距離や構造を検知していると考えられているため,障害物の大きさ・粗さなどを変化させたときの接触回数や移動軌跡等で定量的に評価する.他のひずみセンサを搭載したネズミ型ロボットで同様の実験を行い,比較検討する.また,今年度で立ち上げた方法は,シリコン内に平面的なの流路を造形するに留まっている.そこで,来年度では光造形方式の3Dプリンタとフレキシブルレジンを導入することで,より自由度の高い流路をもつイオンゲルセンサの開発にも取り組む.また,これまでの研究から,イオンゲルセンサは粘度が高いため,流路によってはイオンゲルを注入することが困難である.イオンゲルの材料のーであるイオン液体は,イオンゲルと同様の化学特性を持ち,粘度は低い.よって,流路形状によってイオンゲルとイオン流体の使い分けの検討を進める.
|