本研究の目的は低背化が要求されるMHz級スイッチング電力変換器に使用される低背トランスの高電力密度の限界設計理論を体系化することである。低損失密度を実現する巻線構造の設計手法,低損失密度を実現する磁性材料の選定方法およびその構造設計を統合することで,周辺部品に比べて比較的設計自由度の高い低背トランスを限界設計することができる。これまでの実績および明らかになった課題を以下に示す。 (1)巻線の発熱を分散可能な巻線構造の検討および漏れインダクタンスの非対称化の検討(令和2年度) 電磁界解析により,インターリーブ巻線にすることで一次側と二次側巻線のそれぞれで電流分布を均一にできることを明らかにし,試作した。一方で,試作器の自己共振周波数がトランスの動作周波数の目標値である2 MHz付近であり,浮遊容量が課題である。今後はトランスの端子間浮遊容量を抑制可能なインターリーブ巻線構造を検討する。 (2)二台の電源だけで実負荷試験が可能な負荷試験法を基にしたコンデンサキャンセル方式のトランスの負荷試験法の検討(令和3年度) MHzのトランスにおいては,漏れインダクタンスのリアクタンスが大きく,負荷電流を流すための電源に大きな容量が必要となる。そこで,その電源とトランスの間に直列にコンデンサを接続することで漏れインダクタンスのリアクタンスをキャンセルし,必要な電源の容量の増加を抑制できることを実験的に明らかにした。今後の課題はコンデンサ容量の適切な設計方法を明らかにすることである。 (3)デュアルアクティブブリッジコンバータ用トランスにおける負荷試験法の検討(令和4年度) 外付けインダクタンスを必要とするデュアルアクティブブリッジコンバータ用トランスにおいて,外付けインダクタをつけずに二台の電源のみでデュアルアクティブコンバータの動作を再現し,トランスの負荷試験をできることを実験的に確認した。
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