令和4年度は①ネットワーク構造つきの問題においての単調性の理論解析,②単調性が保存されるような制約不等式の共通する行列構造の抽出,について研究した.その結果,ネットワーク構造つきの問題については単調性が保存されるための十分条件の導出に成功した.また,単調性が保存される行列構造として,単調性の保存に大きな影響を与える制約式を明らかにした.以下に詳しく報告する. 【①ネットワーク構造つきの問題においての単調性解析】 二つのエリア(AとB)を有する簡単なネットワーク構造を想定し,エリアAとBで電力を融通しあうことが出来る状況で,火力機の最適な発電電力の単調性を調査した.需要に関して単調性を有するための理論的な十分条件を導出した.理論解析においては,出力制約のない特別な火力機を想定する必要があるが,メリットオーダーによる複数火力機への配分を想定すれば,現実的な問題への適応は可能であり,その出力配分によって単調性が崩れないことも証明している.この結果はSICE AC 2022(国際会議)で発表済みであり,さらに,IFAC 2023 World Congress(国際会議)においてもアクセプトされており,発表予定である. 【②調性が保存されるような制約不等式の共通する行列構造の抽出】 単調性の保存に大きな影響を与える制約式がSOC(蓄電量)の周期制約であることを明らかにした.この制約は一日の始めのSOCと一日の終わりのSOCを一致させる制約条件である.この制約の存在により,解の候補のヤコビ行列内部に射影行列が現れることが分かった.これに起因して,単調性が保存されることが分かった.
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