研究課題/領域番号 |
20K14727
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研究機関 | 鹿児島工業高等専門学校 |
研究代表者 |
屋地 康平 鹿児島工業高等専門学校, 電気電子工学科, 准教授 (80516667)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 数値電界計算 / 電荷重畳法 / 数値等角写像 / 解の精度保証 / 雪の誘電特性 / 体積分率 |
研究実績の概要 |
2020年度は電荷重畳法を適用した場合に想定される計算誤差について検討し,浮動小数点数形式特有の誤差と電荷重畳法特有の誤差についてそれぞれ,代表的な電極系である球対平板電極,円柱対平板電極にて評価した.2021年度は以下の点について検討した. 1) 2020年度の結果から特異な電極形状または大規模計算では,解にたいする誤差の影響が,場合によっては著しく大きくなる可能性があることが示唆されたため,これらの計算誤差が解にもたらす影響について領域の形状を変化させて調査した.計算領域の形状が円・楕円など単連結かつ凸の場合,星形など単連結だが凸ではない場合,二重連結の場合について誤差を調べた結果,二重連結の場合に誤差が大きくなりやすい傾向が見られたが,単連結の形状であっても計算条件によっては誤差が大きくなる場合があることがわかった. 2) 着雪体の構造を単純化したモデルである球分散系において,有限要素法による数値電界計算を行い,局所的な誘電的作用が大域へと広がっていく様子を調査した.具体的には媒質中に①半径一定の金属球を浮遊させた場合,②半径をランダムに変化させた金属球を浮遊させた場合,の2つの場合にたいし,系内の最大電界および体積分率にたいする見かけの誘電率を求めた.①について系内の最大電界は,球の半径にたいしてバスタブ曲線のようになり最小の最大電界を与える条件の存在が示唆された.②について見かけの誘電率は体積分率0.10~0.35の範囲ではおよそ体積分率にたいし正比例となる傾向が確認された.この結果は予想通りMaxwell・Wagnerの理論にしたがったものと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
雪の誘電特性を,ポテンシャル問題の高速解法のひとつである電荷重畳法を用いて解き,解の挙動を理解するためには,当該手法における数値誤差の大きさを見 積もっておく必要がある.所期の計画は,着雪体の構造を単純にモデル化した,簡易な粒子分散系において,数値電界計算から局所的な誘電的作用が大域 へと広がっていく様子を調べることである.2020年度,誤差の調査の際に思いもよらなかった結果が出て誤差の影響をより詳細に調べる必要のあることが分かり,定量的な評価を行うこととした.現在は誘電的作用の把握と誤差評価について2本立てで研究を進めている. 誘電的作用の把握においては,やや遅れてはいるが所期の計画を進めており引き続き調査を行う. 所期の計画であった雪害事故の現地調査に関しては感染症の影響により出張を取りやめることとし,文献調査等を実施する.
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今後の研究の推進方策 |
誘電的作用の把握においては,引き続き有限要素法による数値電界計算を行い,局所的な誘電的作用が大域へと広がっていく様子を調べる.具体的には,粒子分散系の計算領域のサイズを大きくするなど,より実際の状況に近い着雪モデルを用いて計算する. 誤差の評価においては,誤差が大きくなりやすい条件についてより詳細に検討する.そのためには,倍精度計算では限界があり,多倍長精度計算を用いた誤差評価が有用であると考えられる.多倍長精度計算による計算誤差評価により,仮想電荷の配置方法が数値解の誤差にもたらす影響について調査するとともに,倍精度で精度が評価しやすく,精度が低下しにくい電荷配置法について検討を行いたい. 所期の計画であった雪害事故の現地調査に関しては感染症の影響により出張を取りやめることとし,文献調査等を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
プログラム開発にかかる費用・計算にかかる費用を後ろ倒ししたため. 2022年度に実施する予定である.
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