前年度までの結果を踏まえて,2022年度は,有限要素法による数値電界計算を行い,以下のことを明らかにした. 1) 昨年度までと同様,導電性粒子を絶縁体中に浮遊させたモデル(着雪体の構造を単純化したモデル)において,有限要素法による数値電界計算を行い,局所的な誘電的作用が大域へと広がっていく様子を調査した.2022年度は,粒子形状を変化させ,球の場合と回転楕円体の場合で比較を行った.球と回転楕円体で充填率が同じ場合は,回転楕円体のほうが球より最大電界が高くなる傾向が認められた.また,見かけの誘電率は,回転楕円体の長軸の向きによって変化し,長軸が背後電場に直交する向きに並べて置いた場合に,最も大きくなった. 2) 2022年度は,新たにポリマーがいしへの着雪を模擬して,製品としてのポリマーがいし表面の導電性の評価を行った.CADで典型的な送電用ポリマーがいしの形状をもつモデルを作成し,外被表面に汚損被膜を形成した.汚損被膜にわたって一様な導電率を与えた場合,がいしの円周方向に沿って導電率を変化させた場,がいしの長さ方向に沿って導電率を変化させた場合合について,電流場の数値計算を行い,汚損被膜の最大電流密度,金具間の漏れ抵抗を評価した.導電率が周方向に偏って分布し,ある一方向に導電率が高いパスが形成される場合に,最大電流密度・漏れ抵抗ともに大きくなった.反対に,導電率ががいしの長さ方向に分布する場合には,最大電流密度・漏れ抵抗ともに小さくなった.以上のケースは,がいし表面の単位面積あたりのESDD(Equivalent Salt Deposit Density:等価塩分付着密度)のがいし表面全体での積分値が一定となる条件で計算した.
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