本研究では、車両や産業機器内の電子機器等、金属で遮蔽された空間内の受電対象に対し、マイクロ波を用いて高効率に遠隔給電可能とする技術の確立を目指している。 これまでに、送電アンテナへの反射が最小化するように、寄生アンテナの可変負荷を制御することで、間接的に受電アンテナへの伝達を最大化可能とする手法を確立してきた。ただし、1)筐体内に損失性媒体が存在する、または2)筐体外へのリークが存在する場合、前述の「反射最小=伝達最大」の原理が成立せず、逆に不要な電力損失を招くという新たな課題を特定した。 そこで当初の研究計画を発展させ、寄生・受電アンテナ双方で負荷変調が可能な系を想定し、送受電アンテナ間の伝達特性を予測し、これを直接的に最大化する手法を確立した。新たに導入した30cm角のアルミ製キャビティを使用し、筐体損失を模擬した実験を行い、計25点の受電位置にて平均約10%の給電効率を達成し、無制御時と比較し2倍以上の改善を確認した。本成果については現在、国際学術誌IEEE TMTTへの論文投稿準備を進めている。 更に、最後の損失要因である3)送電アンテナへの反射が残存する場合に対し、送電アンテナに設けた可変整合回路との協調制御法を提案し、反射最小化と伝達最大化を両立する最適条件を導出した。電磁界解析により、あらゆるケースで提案法により最大伝達特性が得られることが証明され、今後、試作オートチューナを用いた実証実験を予定している。 上記成果に関連し、国内学会発表2件により指導学生がアンテナ・伝播研究専門委員会学生奨励賞を受賞した。更に、国際学会AT-AP-RASC 2022での発表によりYoung Scientist Awardを受賞した。加えて、世界三大マイクロ波国際会議APMC 2022を含む2件の招待講演を行い、これらの研究成果に関する論文1件が国際学術誌IEEE AWPLに掲載された。
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