研究課題/領域番号 |
20K14732
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
持山 志宇 京都大学, 工学研究科, 助教 (20867866)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 電力パケット / 二足歩行ロボット / サイバーフィジカルシステム |
研究実績の概要 |
本年度は,パターン生成を行う情報系と,ロボット駆動においてそのパターンを実現するためのエネルギー伝送とを統合する試みの第一歩として,パルスベースのネットワークモデルについて検討した.情報の生成と伝送は,電力を伴うパルスのルーティングにもとづく動的な時空間分布の結果として生じる.電源とモータ負荷との間に多段の電力ルータを配した構成を考え,それらによる電力と情報のルーティング結果にもとづき歩容を構成するパルスが生成される仕組みを構築した.これは,各ルータが隣接ルータからの入力にもとづき次段への伝送状況を決定する分散的な情報の生成と処理を物理系として実現する.ロボットの各モータにはパルス密度の変調によりデジタル化された入力が蹴り出しの瞬間に加えられる.その大きさと周期が適切に設定されることで,歩行の制御が行われる.提案システムを二足歩行ロボットの歩容生成に適用し,パターン生成と電力供給の両方を担うパルス列によって定常的な歩行の実現を確認した.ここで,本検討におけるルーティングネットワークは,情報処理のみならず電力の伝送も担うため,その伝送にかかる損失はシステム全体の性能に大きく影響する.そこで,一般のネットワークにおけるパルス型電力伝送について,損失の評価を考慮にいれたルーティングの実現について検討を行った.その結果,送り主と宛先となる電源負荷間に取りうる経路が複数ある場合について,損失を最小化するルーティング手法を実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の目標である情報系と物理系の統合について,パルス伝送に基づくネットワークの構築を行い,具体的な例として歩容生成の実現に至っている.一部の検討については当初予定から実施順序を前後しているが,研究期間全体の進捗状況としてはおおむね予定どおりである.以上のことから,おおむね順調に進展しているものと判断する.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では,すでに構築したパルスに基づく情報と電力のネットワークを基礎として,センシング情報の利用とより複雑な運動への適用について検討する. これまでの検討では,まずは運動創発の可能性を示すことに重点をおき,フィードフォワード型制御を適用してきた.一方,情報系と物理系の統合の観点からは,センシング情報の処理と得られた情報の電力伝送への利用について検討することは重要である.さらに,制御の対象とするロボットについては,これまで1次元の入力をもつ簡易化された歩行モデルとしてきた.より自由度の高いモデルに適用するためには,これまでになかった入力間の位相に相当する情報の処理とその物理系での実現が重要となる. 以上の観点を含め,理論の構築と実験による検証の両面から検討を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で,引き続き国内海外ともに出張ができず,すべてオンライン対応となり旅費支出がなくなったため.また,一部実験器具・電子部品について世界情勢から納期の遅延・入手困難などが発生し,計画において一部実験の実施内容・順序の再アレンジを行ったため.
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