研究課題/領域番号 |
20K14739
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
K.I AmilaSampath 東京理科大学, 理工学部電気電子情報工学科, 助教 (90801192)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光通信 / 直接検波 / KK受信 / ファイバ伝送 |
研究実績の概要 |
初年度の本年度は,まず,線形的に変調された信号のKK受信方法を用いた受信について検討した.具体的には,次の2点について数値解析を用いた検討を行った.①.KK受信方法を用いる直接検波システムの伝送特性 ② KK光受信器におけるA/D変換時の量子化の影響. ①では線形的に変調された光信号に送信器側で自己コヒーレント検波用の光トーンを挿入した.KK受信方法の要件となる最小位相信号であることを満足するように光トーンと情報信号のパワー比(CSPR)を10 dBにした.受信側で理想的なA/D変換を行われたと仮定し,ファイバ伝送後の信号を評価した.伝送路損失による信号対雑音比の劣化及びファイバ非線形による信号劣化によって伝送距離が制限されることがわかった.受信側に前置光増幅器を用いれば,伝送可能な距離の改善が得られるものの,光受信器の熱雑音および光増幅器の自然放出光雑音が制限要因となることがわかった. KKアルゴリズムを用いた光受信器に高速A/D変換器が必要とされることは一般的に知られている.一方,A/D変換器の量子化がKK受信方法に与える影響が明らかではなかった.②ではA/D変換器の量子化雑音をKK受信方法に与える影響について数値解析による調査を行った.送信信号は①と同様に送信側で光トーンを入れ,最小位相信号になるように設定した.伝送中にファイバ非線形による信号劣化が起きないように,ファイバ入射パワーを0 dBmに設定した.光受信器の熱雑音を考慮し,受信信号の品質と量子化の関係をEVM(Error vector magnitude)を用いて評価した.十分に高いサンプリング周波数でサンプルされた信号に対して,量子化ビット数の増加はEVMを改善することがわかった.さらに,情報信号対光トーンのパワーの比を適切に調整することで量子化雑音による信号劣化を改善できることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の検討結果より,線形的変調を行った場合のKK受信器における性能劣化の要因が明らかになったほか,それらの改善可能性について知見を得られた.目的としている光トランシーバの設計に当たり有益な知見が得られたことから実験計画をおおむね予定通り遂行できていると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後,初年度の研究結果より得られた知見から,KKアルゴリズムのディジタル信号処理(DSP)による実装方法を探る.具体的には,KKアルゴリズム中の各演算処理の実装について検討する.このことにより,送信器側及び伝送中に起きる信号劣化の改善の可能性を探ることができるものと思われる. 受信側で光トーンを入力するトランシーバ構成についても検討する予定である.受信側で光トーンを入れることによって高いCSPRの確保が可能になる一方,伝送信号の高いピーク対平均電力比(PAPR)が高いため,ファイバ非線形性による信号劣化が課題になると思われる.送信側,または,受信側での信号処理を用いて,そのような信号劣化の補償可能性の検討も進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
緊急事態宣言が発出され,大学への入構が禁止になっため,実験計画の変更があった. 実験計画の変更により,初年度に購入および使用予定だった研究部品の内,一部がが第2年度目に購入することになったため,次年度使用額が生じた.
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