本年度はコロナ禍のために研究の開始は若干の遅れが見られたが、前駆的な研究として合成開口レーダ(SAR) 画像に重畳される不要波の検知手法に関し国際会議にて1報発表した。これは、航空機に前後2基の受信アンテナを搭載したX波帯のSAR における不要波の受信状況を解析したものである。2基の受信機で不要波を受信した際に、不要波が2基に時間差をもって到来していることを確認し、その相互相関係数は不要波なしの条件下での相互相関係数よりも有意に高いことを実験的に明らかにしたものである。また、アジマスアンビギュイティの発生に関する数理的な検討結果について国内の研究会へ3報発表することができた。1報は2受信機以上の構成でSAR を運用する場合は再生処理の過程において不可避的にアンビギュイティが生じる場合、1報は1送受信機に対し2パターン以上のチャープ信号を利用する場合にアンビギュイティが生じる場合の検討である。これらナイキストのサンプリング定理と深く関連していること、さらにもう1報においてこのアンビギュイティを信号の相関性を利用して抑圧できることを報告した。 また、災害時の干渉コヒーレンスの変化に関する研究を進めたが、こちらは次年度以降の研究成果として発表できる見込みである。 本年度は国際学会への海外出張が無かったため、当初より高性能の計算機を購入することができ、よりシミュレーション研究については当初より進捗が進んだ。本年度はシミュレーションデータを主体に研究を進めたが、次年度以降に実際の観測データを利用した研究を行えるようソフトウェアの開発など準備を進めている。結果的に当初予定とあまり変わらない進捗状況となった。
|