研究課題/領域番号 |
20K14748
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
當麻 真奈 東京工業大学, 工学院, 助教 (20756697)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バイオセンサー / プラズモン / プラズモニック呈色 / 比色法 |
研究実績の概要 |
本研究は、疾病や健康状態に関わる生体分子をセンサ感応部の色の変化として検出可能な金属ナノ構造配列表面を開発し、標的となる生体分子をスマートフォン内蔵のカメラで迅速・高感度かつ定量的に検出できるバイオセンシング技術を確立することを目的としている。 本研究では、センサ基板の色の変化による標的分子の検出を可能にするため、鮮やかに発色する金属ナノドームアレイ構造をセンサ基板の感応部に用いている。金属ナノドームアレイ構造は、自己集合プロセスによって配列したポリスチレン粒子膜上に金属薄膜を蒸着して作製でき、ポリスチレン粒子の粒径や蒸着する金属種によって、発色の制御が可能である。研究の初年度である2020年度は、色相角度で数値化された色をセンサ信号に用いるために最適な金属ナノドームアレイ構造のパラメーターを探索した。具体的には、構造作製に用いるポリスチレン粒子の粒径によって銀ナノドームアレイ構造のドーム径を制御し、溶液の屈折率変化を検出する屈折率センサとしての性能評価を分光法および色を測定する比色法によって行った。その結果、ドーム径を最適化した銀ナノドームアレイ構造では、分光法よりも比色法でより高い屈折率感度が得られることが明らかになった。時間領域差分法による数値計算結果からも、特定の波長域に反射ディップを示す銀ナノドームアレイ構造では、比色法の方が優れた屈折率感度が得られることが示された。以上の結果から、発色する金属ナノ構造配列表面を用いた比色型のバイオセンシング手法の優位性を示す重要な知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、比色法に適した金属ナノドームアレイ構造のパラメーター決定と数値計算モデルの構築を計画目標にしていた。これまでの研究の実施によって、最適化した金属ナノドームアレイ構造からなるセンサ基板では、センサ基板の色を色相角度で数値化して評価する測定法で反射分光法よりも良好なセンサ性能が得られることが、バルク屈折率測定によって明らかとなった。数値計算モデルでも実験と同様の結果が得られており、当初の研究目標を概ね達成できている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究成果から、色空間座標で数値化した“色”をセンサ信号として用いるのに最適な金属ナノドームアレイ構造が得られた。2021年度は、最適化したセンサ基板を用いた生体分子計測を行い、提案手法のバイオセンサ性能を評価する予定である。具体的には、モデル系によるイムノアッセイを構築し、反射分光法およびカラー画像からの色相角度解析を行い、両手法による検出感度の差異を信号対ノイズ比および検出限界濃度を指標として明らかにする。
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