研究課題/領域番号 |
20K14753
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
加納 徹 東京理科大学, 工学部情報工学科, 助教 (40781620)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非破壊検査 / X線CT / メタルアーチファクト / 画像再構成 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、多軸コーンビームCTにおける投影軌道の最適化についての検討を進めた。これまでは、X線投影データ上の金属の面積を最小化するよう回転制御を行う手法を提案してきたが、金属の形状や材質によって面積を正しく計算できないことがあった。そこで、被写体の変化に頑健な投影軌道の導出方法として、投影データの度数分布に注目し、透過強度の偏りを最小化するような回転制御を提案した。効果検証は開発したX線シミュレータ上で、一辺 20 mmの立方体樹脂材料に金属ピンを4個埋め込んだ数値ファントム(コネクタピンを模擬)を対象に実施した。評価指標として真値との SSIM (Structural Similarity: 構造的類似性) を確認したところ、メタルアーチファクトが発生した画像と比較して 19%、従来手法と比較して 7% の画質改善が確認された。
また、実際の撮影環境下における検証を進めるため、X線コンピュータ断層撮影装置(株式会社アールエフ: NAOMi-CT 001C)を購入し、装置の組み立て作業および動作確認を行った。多軸機構を実現するための1軸および2軸のゴニオステージ(精密回転ステージ)を、X線CTの内部に取り付けて撮影可能であることを確認したが、被写体の高さの制約上、現実的には1軸のゴニオステージのみ利用可能であった。装置内部に設置したゴニオステージは、現状では手動による角度調整のみが可能となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
メタルアーチファクトを再現するX線CTのシミュレーションシステムに汎用性を持たせるため、システム全体の見直しおよび修正を行う必要があった。このため、軌道最適化についての検討を進めることはできたものの、当初予定していた不均質な三次元ラドン空間を補正する再構成アルゴリズムの検討を進めるには至らなかった。
シミュレーション上の検討と並行して、実際のX線CT撮影環境の整備も行った。内部にゴニオステージを設置し、撮影と角度調整を手動で繰り返すことで、さまざまな角度からの投影データを収集する手順を構築したものの、一般的な再構成に必要な400~800枚の画像を収集するには膨大な時間を要する。今後は円滑に研究を遂行するため、多軸回転および撮影機構を自動化することが望ましい。
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今後の研究の推進方策 |
軌道最適化に関する理論については、より有効・頑健なものとするため、今後もシミュレーション上での検討を継続する。令和2年度は、コネクタピンを模擬した数値ファントム上での検証を行ったが、集積回路や電子基板など、よりさまざまな電子部材を模擬した数値ファントムを作成し、効果の検証を進める。さらに、不均質な三次元ラドン空間が再構成に与える影響の大きさを定量的に確認し、ラドン空間を効果的に補正する再構成アルゴリズムを提案することで、多軸コーンビームの理論部分の完成を目指す。
理論の構築が進み次第、実際のX線CT撮影における有効性の検証も進める。これまでの検証では、高さの制約上1軸のゴニオステージしか設置困難であったが、2軸以上のゴニオステージを設置するための手段についても検討する必要がある。また、現状の手動で撮影を繰り返す方法では撮影実験の度に膨大な時間を要するので、電動ゴニオステージの導入およびコンピュータによる回転軸制御を実装していくことを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
X線CT本体を購入するため、前倒し支払請求額を使用して、直接経費計3,200,000円のうち、3,199,999円を使用した。次年度使用額として1円残ってはいるが、今後は研究者が所属する機関の研究費を主として利用し、研究を進める予定である。支出は主に、学会参加費と論文投稿費となる見込みである。
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