令和4年度は前年度に引き続き,多軸コーンビームCTに組み込むことを想定した,メタルアーチファクト低減のための再構成アルゴリズムについての検討を進めた.多軸機構によりハードウェア的に投影データ上の金属物質の重畳を回避することに加え,ソフトウェア的に再構成計算の矛盾を解消するものである.投影データの集合体(サイノグラム)がサインカーブで構成されるという特徴に着目し,金属によって欠損した領域を,Mahnken補間とサインカーブ補間を組み合わせることで,効果的に補う方法を提案した.Mahnken補間でサインカーブの分断距離を縮小し,その後サインカーブに沿った形状補間を行うものとなっている.Mahnken補間でどれだけの領域を事前補間するかについては,補間領域の数と広さをパラメータに,グリッドサーチで最適なものを探索する手法を採用した.そのシミュレーション実験および実際のCTデータを用いた実験では,RMSE (Root Mean Squared Error)とSSIM (Structural Similarity)を用いることで,樹脂,鉄,アルミニウムの3物質で構成されたファントムに対して,アーチファクト低減効果があることを確認した.しかし,断面形状が未知かつ複雑な形状のファントムについて,効果を確認できていないため,引き続き手法の汎用性・有効性について検証を続けていく必要がある. また,求められるメタルアーチファクト低減の効果は,X線CTを利用する領域で大きく異なる.そこで,より多くの研究者がCTのアーチファクト低減に取り組み,さまざまな検討を重ねていけるよう,X線CT投影シミュレーションプログラムのWebアプリケーション化を行った.本プログラムはJavaScriptで開発しており,CTシミュレーション研究の指針の一つとして活用していけるよう,今後チューニングを進めていく予定である.
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