研究課題/領域番号 |
20K14754
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山口 達也 日本大学, 理工学部, 助手 (90822205)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 振動センサ / 光ファイバセンサ / ファイバブラッググレーティング / 波長掃引レーザ / 実時間計測システム |
研究実績の概要 |
ファイバブラッググレーティング(FBG)は防爆性や耐腐食性に優れた光ファイバセンサであり、長期的かつ安定的に運用できる振動センサとして知られている。本研究ではバッファ光学系を用いた波長掃引レーザを構築し、300kHzの測定レートを実現するFBGの実時間振動計測システムの開発を目指している。令和3年度はFBGの設置位置に影響されない多点の振動計測を達成するため、FBGの反射光の自動認識機能および遅延補正機能を開発した。 この機能はバッファ光学系を用いた波長掃引レーザに高速光スイッチを組み合わせることで実現した。高速光スイッチはパルス変調することにより、レーザから任意の波長領域の光をパルス光として抽出できる。この抽出したパルス光を各FBGの波長帯域幅に合わせて順次照射することにより、特定のFBGの反射光のみを選択して検出できる。この操作によって、任意の距離に設置されたFBGの反射光を識別し、遅延の影響の補正が可能になる。そのため、この機能を搭載した計測システムでは近距離から遠距離まで任意の距離に多点化されたFBGの計測を実現した。また、測定レートの高速化を図るために、3光路型のバッファ光学系を用いた波長掃引レーザを開発した。本レーザを計測システムに組み込むことで、300kHzの測定レートにおいて多点化したFBGの同時計測を実現した。これと並行して、センサ数の増大に対応するため、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)によるディジタル演算を用い、計測システムの多チャンネル化を図った。また、バッファ光学系を用いた波長掃引レーザを分光測定に適応し、スペクトルのリアルタイム測定を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目的は「300kHzの測定レートを実現するFBGの実時間振動計測システム」を開発することである。令和3年度は、FBGの反射光の自動認識機能と遅延補正機能を計測システムに付与するため、高速光スイッチを用いたパルス変調を導入した。これにより、FBGの任意距離の設置が可能になり、これまで数十mに制限されていたFBGの設置範囲を数kmに大幅に向上させることができた。また、測定レートの高速化を図るために、3光路型のバッファ光学系を用いた波長掃引レーザを開発し、300kHzの高速な測定レートを実現した。さらに、バッファ光学系を用いた波長掃引レーザを分光測定に適応し、高速なスペクトル測定に応用できた。これと並行して、センサ数の増大に対応するため、FPGAによる計測システムの多チャンネル化を行った。これら、令和3年度に得られた知見を海外雑誌論文および諸学会で発表した。以上のことから、本研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
同時に計測できるセンサ数は計測対象から得られる情報量を決めるため、計測システムの性能において重要な指標の一つになっている。そこで、令和4年度は計測システムの多チャンネル化によるセンサ数の拡大について検討を進める。多チャンネル化では、多点化したFBGの反射光を300kHzの測定レートで高速に検出する必要がある。そのため、FPGAによるディジタル演算を用いた処理能力の大幅な向上により、リアルタイム処理を実現する。本検討によって、最終目的である「300kHzの測定レートを実現するFBGの実時間振動計測システム」の開発を遂行する。 令和3年度では、多チャンネル化を進めるため、FPGAを搭載した第1試作システムを開発した。試作したシステムをシミュレーションにより動作検証した結果、FBGの反射光を300kHzの測定レートで検出するための処理能力が十分に備わっていることが明らかになっている。そのため、多チャンネルに配置したFBGによる光学実験を実施することにより、令和4年度の研究計画を推進していく。
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