研究課題/領域番号 |
20K14758
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
武井 良憲 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (00805145)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 真空 / 圧力 / 標準 / ファブリ・ペロ共振器 / 屈折率 / 光学式圧力計 / 熱力学温度 / 分極率 |
研究実績の概要 |
圧力は、気体の状態方程式および分子密度と屈折率の関係式より、屈折率と温度から求められる。本研究では、1 Pa~100 kPaの圧力範囲を対象に、光学式圧力計を開発している。気体の屈折率は、ファブリ・ペロ共振器と周波数可変レーザを用いて計測する。気体の温度は、恒温水や断熱材を用いてチャンバ全体の温度調整をし、サーミスタと標準抵抗と電圧比測定器を用いて計測する。学式圧力計の課題は、計測感度の補正である。近年、ヘリウムの分極率とアルゴンの分極率がそれぞれ相対標準不確かさ 0.2 ppmと2 ppmで求められた。ヘリウムを用いた光学式圧力計測とアルゴンを用いた光学式圧力計測を、同じ圧力条件下で行うことで、装置の計測感度をそれらの分極率から算出可能である。装置の計測感度を圧力以外の物理量(気体の分極率)から補正できれば、従来の圧力標準を用いた校正をしなくても光学式圧力計単体で圧力の絶対値が計測可能になり、真空域の圧力計測技術を発展させられる。2020年度の研究成果は主に下記の2点である。 [研究実績①](論文掲載済) 光学式圧力計を用いて圧力の絶対値を計測する際の課題の一つが、ファブリ・ペロ共振器のミラーの変形である。長さ以外の条件が同じ、長さ100 mm と50 mm の、2台のファブリ・ペロ共振器を用いて、ミラーの変形量をIn-situ計測する手法を開発した。 [研究実績②](プロシーディングス提出済) 材料のエージングによるファブリ・ペロ共振器の長さの径時変化量を、真空条件下での共振周波数の変化量から測定し、補正した。また、メタルシールの真空チャンバ利用時の、アウトガスによる圧力上昇量を光学式圧力計で測定した。さらに、高純度アルゴンを用いた光学式圧力計と校正された圧力計の比較実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に、光学式圧力計の計測感度をヘリウムの分極率とアルゴンの分極率から決定する実験の目途がたった。ヘリウムを利用する際には、屈折率が水蒸気や窒素に比べて小さいため、リークやアウトガスによる不純物濃度が光学式圧力計の計測結果に大きく影響する。高純度ヘリウムガス利用するためにメタルシールのチャンバや配管や計測器を導入した。また、まずは高純度アルゴンガスを利用した実験を行った。加えて、ファブリ・ペロ共振器のミラー変形量をIn-situ補正する手法を開発した。
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今後の研究の推進方策 |
光学式圧力計は、1 Pa ~ 100 kPa の範囲を対象に研究開発している。絶対値を計測するために、ヘリウムの分極率とアルゴンの分極率から、光学式圧力計の感度(圧力比例項)、決定する。この際に、ガスの純度と温度計測精度が課題となる。ガスボンベ内の不純物濃度は 1 vol.% 以下である。しかしながら、配管を通ってチャンバ内に供給し封じ切った後には、アウトガスの影響で悪化している。2020年度にアウトガスの低減とその影響の評価を行った。2021年度には、ガス供給の度に直前まで真空引きしておきガスは精製器を通して供給する方針である。さらに、アウトガスやリークによる不純ガスの影響を軽減するために、ヘリウムは100 kPa 付近でのみ利用する方針である。100 kPa 付近でヘリウムの分極率とアルゴンの分極率から、光学式圧力計の感度(圧力比例項)を決定し、その後、アルゴンや窒素を用いて、1 Pa までの低真空の圧力を計測する方針である。また、温度計測に関して、2020年度に超安定な標準抵抗を調達した。また、高真空対応の温度センサを複数本作成し校正した。2021年度に、センサの長期安定性やファブリ・ペロ共振器周りの温度分布などを詳細に評価する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要な物品の調達および成果発表に予算を充てた結果、3,994円の次年度使用額が生じた。2021年度の使用計画に関して、当初の予定通りに進める。
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