本研究の目的は,デスクリプタシステムによって非プロパーな逆システムを適切に扱い,申請者がこれまでに行ってきた連続時間と離散時間の違いを意識したシステムの離散時間化の成果によって,逆システムを実装可能とすることである.これに対して,2021年度は前年度に引き続き,逆システムをディジタル機器で実装するための理論的な研究に取り組んだ. 具体的には,デスクリプタシステムを用いて表現した逆システムの離散時間化手法・離散時間モデルとして,これまでの研究によって候補として挙がり検討している代入モデルを取り上げた.この代入モデルについて,その精度や制御系への影響について研究した.特に開ループ系だけに留まらず,閉ループ系に関してもその影響を調査し,その結果として,サンプリング周期といった離散時間化の影響やシステムのバンド幅などといった応答の速さだけでなく,逆システムが非プロパーである事に関連してこれまでも注目していたシステムの次数も,代入モデルによって離散時間化したシステムの応答精度に影響を及ぼすことを明らかにした.これにより,逆システムなどの非プロパーな系の離散時間化の候補となる代入モデルによる離散時間に対する理解を深めた.また,閉ループ系に関する調査も行ったことに伴い,代入モデルを用いた制御系の離散時間化・設計に対する理解を深め,逆システムの離散時間化とその制御系設計に関する理論的な枠組みの構築を進めた.
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