研究課題/領域番号 |
20K14760
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 一宏 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 講師 (00751869)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 可制御性 / リーマン多様体上の最適化 / グラフ理論 |
研究実績の概要 |
非凸最適化問題としての定式化が自然なシステム制御分野の問題は多い.しかし,最適化の分野で近年開発されている非凸最適化手法は,発展著しい機械学習の重要な問題が非凸最適化問題として定式化されることに強く影響された手法が多い.すなわち,システム制御の具体的な問題を念頭に開発された非凸最適化手法はないと言っても過言ではなく,非凸最適化手法がシステム制御の様々な問題に対してどの程度有効に応用できるのかはほとんど明らかにされていない.本研究の目的は大規模ネットワークシステムの最適設計問題を通じて,これまで解けなかった問題を解くことを可能にする最適化理論を構築することである.すなわち,システム制御の具体的な問題を契機として新しい最適化理論の創造が可能であることを示そうとしている.
これに対し,本年度の主な成果は以下の通りである. (1)微分方程式と代数方程式で表現される構造化ディクリプタネットワークシステムの入力数最小の可制御性問題を離散最適化の観点から研究し,以下を明らかにした:一つの入力が複数の状態ノードに影響を与えることが出来る状況では最小可制御性問題は多項式時間で解ける.一方で,一つの入力が一つの状態ノードにしか影響を与えることできない状況では最小可制御性問題はNP困難になる. (2)大規模な非負ネットワークシステムの性質を保存したまま低次元化する方法をリーマン多様体上の最適化の観点から研究し,アルゴリズムを開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的を達成するための基盤技術の開発が順調に進んでいるため.
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今後の研究の推進方策 |
以下の2点について検討する. (1)昨年度に引き続き,大規模ネットワークシステムの可制御性に関する問題に取り組む.ただし,昨年度は離散最適化を用いて定性的な観点から研究したが,今年度は連続最適化を用いて定量的な観点から研究を進める. (2)昨年度はリーマン多様体上の最適化法を用いて大規模な非負ネットワークシステムの低次元化法を研究したが,実行可能解が必ずしも得られるとは限らず,真に大規模なシステムに対して適用することが難しいなどの問題点があった.そこで本研究では真に大規模な非負ネットワークシステムに対しても必ず実行可能な低次元化モデルが得られる手法を研究する.
上の(1),(2)の研究課題は昨年度の研究から,通常の最適化理論の枠組みから少しずれていることが確認できている.そのため本研究の目的である「これまで解けなかった問題を解くことを可能にする最適化理論の構築」を前進させる課題になると思われる.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの流行のため予定した学会などに参加することができなかったため次年度使用額が生じた.しかし,研究をより効率的に推進させるためにモバイルワークステーションを購入したため既に使用済みである.
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