大規模ネットワークシステムの最適設計アルゴリズムの開発を目指して,以下の研究成果を得た. (1) 大規模な構造化ディスクリプタシステムの可制御性解析:状態間の作用を有向グラフで表現する大規模な構造化ディスクリプタシステムの最小可制御性問題(最小の入力数でシステムを可制御性にする問題)を研究した.特に,最小可制御性問題は多項式時間で解けるクラスとNP困難になるクラスがあることを明らかにした.また,入力を加えることが可能なノードに制約を付けた場合にも多項式時間の解法アルゴリズムを与えた.これらに関する成果は国際専門誌2本に掲載された. (2) Kron縮約と有効抵抗の概念の有向グラフへの一般化:大規模な無向グラフに対応するラプラシアン行列の縮約手法としてKron縮約が有名であるが,有向グラフの場合にも利用できる形で概念を拡張した.さらに,その結果と,電気回路とマルコフ連鎖との関連性を利用し,無向グラフに対して定義されていた有効抵抗の概念を有向グラフに対して拡張し,無向グラフの場合に対して知られていた結果が有向グラフに対しても自然に拡張できることを示した.この成果は国際専門誌に掲載された. (3) 大規模ネットワークシステムのモデル低次元化法の開発:大規模ネットワークシステムは様々な応用に現れる.そのようなシステムを制御する際には適切なモデル低次元化を行うことが重要である.本研究ではリーマン多様体上の最適化や射影勾配法に基づく低次元化法を提案した.これらの成果は国際専門誌2本に掲載された.また,ランダム射影を利用した低次元化法も提案した.この成果も専門誌に掲載された. (4) データ駆動型制御器設計法の開発:出力データだけを利用して,指定された構造を備えたフィードバックゲインの設計法の研究を行った.この成果も国際専門誌に掲載された.
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