本研究では,モデルベース開発(MBD)における機能と設計コストの同時最適化に基づく新しい制御システムの設計手法の提案について調査・研究を進めた。研究では,モデルの機能を表すパラメータと設計コストの同時最適化問題を設定し,ε制約付き遺伝的アルゴリズム (εGA)を用いた最適化手法にデータベース駆動型アプローチを併用した効率的な最適化手法を提案した。 最終年度では提案手法の産業応用への適用を目指して,その研究成果の普及・振興に努めた。具体的には本研究で提案するアプローチを含む新しいMBDの概念を「スマートMBD」と位置づけ,広島県を中心にMBDを推進するものづくり企業(4社)の技術者とともに「スマートMBD技術懇話会」を発足した。スマートMBD技術懇話会では,産業界がMBD適用において抱える問題とその解決アプローチについて年間を通じて10回にわたって議論を重ねた。これらの活動の中で,本手法の基本的なコンセプトが産業界のニーズをとらえており実適用の可能性があることが示唆された。また,スマートMBDの基本概念についてより広く周知をするため,システム制御情報学会が発行する学会誌「システム/制御/情報」の中で,MBDに関する特集号(2023年8月掲載)を企画し,その中で「スマートMBDアプローチに基づく制御システム設計 -モデルとデータを融合した新しいMBDを目指して-」と題した解説記事を執筆した。
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