研究課題/領域番号 |
20K14768
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
星野 光 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (30836292)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コージェネレーション / 地域熱供給 / 階層的制御 / 蒸気ネットワーク |
研究実績の概要 |
地域熱供給システムの応答を考慮したコージェネレーション(Combined Heat and Power; CHP)の協調制御によりアンシラリーサービスを提供(電力系統の周波数制御に参加)するための制御手法を検討した。地域熱供給システムにおける蒸気圧力の応答は遅い一方、蒸気流速の変化は比較的速く、CHPの出力調整の影響は時間差のある応答として現れる。本研究では、このような複合時間スケールでの応答を考慮して、熱供給システムの安全性を確保した制御を行うために、追従制御器と軌道生成器で構成される階層的な制御手法を検討した。その結果、以下の成果を得た。 (1)電気供給システムと熱供給システムに対する統合的な追従制御器(非線形制御手法による出力レギュレーションのための制御器)と、熱供給システムの安全性を確保するための軌道生成器(安全性に関わる制約を考慮したモデル予測制御器)を組み合わせた階層的な制御の枠組みを提案した。 (2)追従制御器と軌道生成器を組み合わせる際の追従制御系の非線形特性の扱い方について検討し、軌道生成器により計算される予測軌道に基づいて、追従制御系の閉ループ特性を表すモデルの反復的な線形化および離散化を行う方法を提案した。 (3)上記の提案方法を2つのコージェネレーションで構成される地域エネルギーシステムのモデルへと適用し、提案手法の有効性を数値シミュレーションにより確かめた。その結果、提案手法を用いることで、熱供給システムの安全性に関する制約条件を満たす範囲内で、アンシラリーサービスの提供のための発電電力指令値への追従が可能となることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、熱供給システムの複合時間スケール的な応答を考慮したコージェネレーションの協調制御のための階層的な制御手法の枠組みを提案するとともに、この階層構造における追従制御器と軌道生成器を組み合わせる際に課題となる、追従制御系の非線形特性を扱うための方法を開発できた。これにより1年目の目標が概ね達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は地域熱供給システムの応答を考慮したコージェネレーションの協調制御によりアンリラリーサービスを提供(電力系統の周波数制御に参加)するための制御手法を提案した。2021年度は提案手法を用いた場合の発電電力指令値への追従性能を、米国のアンシラリーサービス市場で用いられている評価指標等を用いて定量的に評価する。特に、熱供給システムにおいて許容できる蒸気圧力の幅など安全性に関する制約条件を変更した場合における発電出力の追従性能の変化の特性を分析し、熱供給システムの安全性に関する制約と追従性能のトレードオフの関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた出張が新型コロナウイルス対策により中止となり、旅費が少なく済んだため。 この分については次年度における本課題に関する出張および投稿料の支出の費用として充てる予定である。
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